憧れの大学 人気の秘密に迫る! 第7回関西大学 システム理工学部 グリーンエレクトロニクス工学科編 Part2

憧れの大学 人気の秘密に迫る! 第7回関西大学 システム理工学部 グリーンエレクトロニクス工学科編 Part2
憧れの大学 人気の秘密に迫る! 第7回関西大学 システム理工学部 グリーンエレクトロニクス工学科編 Part2

この記事は「憧れの大学 人気の秘密に迫る! 第7回関西大学 システム理工学部 グリーンエレクトロニクス工学科編」の続きです。よろしければそちらも併せてご覧ください。



2030年に迫る「廃棄シリコン問題」と経済安全保障

 もう一つ、黒川先生が情熱を傾けているのが「廃棄シリコンのアップサイクル」だ。耳慣れない言葉かもしれないが、背景には切実な問題がある。

 2012年前後、国の政策によって大量の太陽電池パネルが全国に設置された。太陽電池の寿命は20〜30年。2030年代に入ると、その多くが一斉に寿命を迎え始める。パネルの金属部分はリサイクルが容易だが、主要部分であるシリコン半導体は、コスト面からほぼ廃棄されているのが現実だ。「今はゴミでしかないが、それを資源化できれば環境問題を緩和できるのではないかと、今まさに研究を始めたところです」

 しかし問題はそれだけにとどまらない。高純度のシリコンを作るには大量の電力と石炭が必要なため、「電気や材料が安いところではないと作ることができない」と黒川先生は言う。製造できる地域は世界で限られており、日本では生産しておらず輸入に頼っている。「国際情勢の影響などで日本に入ってこなくなれば、半導体の枯渇問題が起きる」。廃棄シリコンの再資源化は、環境問題であると同時に経済安全保障の問題でもある。確立した技術がまだない領域だからこそ、研究者が挑む意義がある、と黒川先生は語る。

 研究には「早急に社会還元すべきもの」と「長い時間をかけて知見を積み上げるもの」の二種類がある、と黒川先生は言う。照度の低い場所でも優れた発電効率を発揮するペロブスカイト太陽電池のように、海外ではすでに開発競争が激化しており急いで研究・量産体制を進めるべき分野もある。一方、「仕組みから根本的に変えてしまう基礎研究は時間がかかる。でも、長く取り組んだ分だけドラスチックに変化を生み出す可能性があります。電力消費がほとんどゼロになるようなものができるかもしれない」。短期と長期、両軸で地球環境を守る未来を追い続ける姿勢が、この研究の根幹にある。




日本初の学科で育てる 環境を守る「新しい理工系人材」

 黒川先生は名古屋大学から関西大学の当学科に籍を移した。決め手は「日本初の試み」という言葉だった。グリーンとエレクトロニクスを融合した学科はこれまで日本に例がなく、自身の研究のフィールドと完全に一致していた。「私の研究が半導体でエネルギーを作り出すというものですから、まさにぴったりの場所だと感じました」

 カリキュラムは縦と横の構造で設計されている。縦は電子工学の体系的な積み上げ。装置・評価・プロセス・設計を年次ごとに学び、半導体製造の全分野を体験する。横は「グリーンエレクトロニクス概論・応用」の科目であり、1〜3年次を通して環境への視点を育む。黒川先生はこの概論を担当しており、各教員が「半導体技術が環境問題への解決にどう貢献できるか」を持ち回りで伝えていく内容だという。

 さらに1年次からクリーンルームでの実験・実習がある。クリーンルームで最初に学ぶのは「人間が最大の埃(ほこり)の発生源である」という事実。それを出さないようにするための所作を身につけた状態で卒業することは、半導体・GX(グリーントランスフォーメーション)関連企業での即戦力につながる。「新しい経験を目の当たりにした時の学生の表情が非常によかった。好奇心で目が輝いていました」と黒川先生は目を細めた。

 2年次には台湾への短期留学(約3週間)もあり、半導体のメッカ・台湾で国際交流を積む。「世界各国が2050年までにカーボンニュートラルを目指しているように、環境問題への取り組みは終わりませんし、電子工学は今後も確実に必要とされます」。環境と電子工学、この二つが重なる場所に立つ者だけが担える仕事がある。


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