大学での学びの内容を知る①(環境工学・環境科学系)Part4

大学での学びの内容を知る①(環境工学・環境科学系)Part4
大学での学びの内容を知る①(環境工学・環境科学系)Part4

この記事は「特集 大学での学びの内容を知る①Part3」の続きです。よろしければそちらも併せてご覧ください。


2⃣環境工学・環境科学系の学びの実例~立命館大理工学部環境都市工学

 立命館大は、1869年に西園寺公望が京都御苑内の私邸に開いた私塾、立命館を創始とし、1900年に西園寺の秘書も務めた中川小十郎が設立した京都法政学校を学園創立の起点とする、創立から125年を超える歴史を持つ大学である。その中で理工学部は、1914年に京都帝国大学内に設立された私立電気工学講習所を継承・改組する形で1938年に開校した立命館高等工科学校を源流とし、1949年に新制大学の学部として設置された。1994年にびわこ・くさつキャンパスの開設に伴って拡充移転し、現在は数理科学科、物理科学科、電気電子工学科、電子情報工学科、機械工学科、ロボティクス学科、環境都市工学科、建築都市デザイン学科の8学科で構成されている。

 立命館大環境都市工学科は、2018年に環境システム工学科と都市システム工学科を統合して再編された学科であり、環境工学と土木工学を基盤に、「安心・安全な生活、快適で持続可能な社会を創造する」ことを掲げ、社会活動と自然環境とが調和した新たな都市・地域環境を創造し、SDGsに貢献する研究者・技術者の育成を目指している。学生は1回生で学科全体の概要を学んだ上で、2回生から「環境システム工学コース」と「都市システム工学コース」に分かれる「ゆるやかなコース制」をとり、卒業研究はコースを問わず希望する研究室を選ぶことができる。

 また、日本技術者教育認定機構(JABEE)認定の「環境工学デザインプログラム」や、北米、アジア、ヨーロッパなどで学ぶ「海外スタディ」、水質分析や近隣の地域を対象としたまちづくり提案を行う環境管理調査実習といった実践的な学びを備えている。



〈立命館大理工学部環境都市工学科 佐藤圭輔准教授インタビュー〉


■研究の概要

 「私の研究室は『流域環境情報研究室』という名前で、流域、環境、情報の3つがキーワードになっています。私はもともと工業高等専門学校の制御情報工学科の出身で、その後大学に編入学して研究者を志してからは、土木・環境工学に関わる分野を研究対象としています。

 土木工学というと橋や道路、海や川などが対象になりますが、それらを取りまとめた表現として『流域』という言葉があり、学生の頃からこの流域を対象に研究をしてきました。当初取り組んでいたのは地球環境変化、特に温暖化によって海面上昇が起こると沿岸域が浸水するという問題です。防潮堤で波を防ぐにはどうするか、海面上昇に津波や高潮が重なると浸水被害がどこまで広がるか、といったテーマを扱っていました。現代の日本ではある程度までなら防ぐことができますが、海外、特に途上国には防げない地域も多いので、そうした地域を中心に浸水被害のシミュレーションをするような研究を行っていました。



 情報分野から土木・環境に移った人間なので、研究に際しては情報をうまく使って研究するというアプローチをずっと得意としてきました。私が学生の頃から使っている代表的な情報技術がGIS(地理情報システム)です。電子的に表現された地図を重ね合わせ、そこから新しいデータを作り出すことができる技術で、今では地図を扱う人なら理系・文系を問わず大体使っています。当時はまだWindowsもパソコンも普及していなかった時代で、UNIXという基本ソフトで動くワークステーションと呼ばれる大型の計算機の上でしか扱えませんでした。人工衛星のデータも出始めてはいたものの、簡単には使えなかった時代です。そのため、学生の頃には、土木分野の大手コンサルタント会社との共同研究で、大学の大型計算機の一角に拠点を作り、世界の地図情報を使って海面上昇による浸水域をマッピングした世界地図を作りました。これにより、日本はそれほど浸水しないけれど、ベトナム南部やベンガル湾沿岸などは海面上昇ですぐに水が入ってくる、といったように、海面上昇による浸水の影響が大きくなる地域の特定が可能になりました。

 情報技術の発展により、土木・環境の分野でも研究環境は大きく変わりました。一番大きいのはデータの整備です。昔は世界規模の整備されたデータは本当に限られていましたが、今は人工衛星のデータも、かつては非常に高価だったものが無料で手に入る時代になりました。気象の観測データも、観測地点によってデータの蓄積状況はさまざまですが、整備は着実に進んでいます。また、解析のためのソフトウェアも、一部の専門家しか使えない特殊なものから誰でも使えるフリーソフトへという流れがこの10年で進みました。だから、データを収集して分析にかけてみる、という作業自体は高校生でも十分取り組める時代になったと思います。データを集めるための時間が大幅に減った分、それをどう使うかというユーザー側の創造性が問われる時代になっています。

 現在の研究の柱は大きく4つあります。1つ目は気候変動で、水が足りなくなる渇水と、多すぎて起こる洪水の両方にアプローチしています。2つ目は豪雨と浸水の予測です。浸水被害が最近頻発する理由には、雨が強くなっていることとインフラが脆弱になってきていることの両面があります。特に集中度の高い雨が増えているといわれますが、それは本当なのかをデータで明らかにし、そうした雨がどのような浸水を発生させうるのか、人が住む危険な場所を特定する研究をしています。3つ目が閉鎖性水域の水質、4つ目が水や資源の循環システムで、これらは後ほど詳しくお話しします。最近では機械学習を使って水質や気候を予測することにも取り組んでいて、情報を使う力という自分の強みを生かしたアプローチを続けています。」

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