特集 大学での学びの内容を知る②(スポーツ系)  part2

特集 大学での学びの内容を知る②(スポーツ系)  part2
特集 大学での学びの内容を知る②(スポーツ系)  part2

この記事は「特集 大学での学びの内容を知る②(スポーツ系) part1」の続きです。よろしければそちらも併せてご覧ください。


■研究室での学生の学び

 「早稲田大に着任してからまだ数年であるため、学部生については、これから本格的に卒業生を送り出していく段階です。私の研究室に所属する学生の多くは、スポーツが好きで、将来的に何らかの形でスポーツに関わる仕事をしたいという思いを持っています。ただし、プロ選手として競技を続ける学生が中心というわけではありません。むしろ、スポーツを支える仕事、スポーツの隣で働く仕事、スポーツを社会に広げる仕事に関心を持つ学生が多いです。


 スポーツ科学部というと、競技者やトレーナー、コーチを育てる学部だと思われることがあります。もちろん、そうした領域もスポーツ科学の重要な一部です。しかし、スポーツ科学には、舞台の上で最高のパフォーマンスを発揮する人を育てる研究だけでなく、その舞台を成立させ、価値あるものにするための社会の仕組みを考える研究もあります。私の研究室は後者に近い領域を扱っています。学生たちは、スポーツを『する』側だけでなく、『見る』『支える』『集まる』側からも考えます。


 政府のスポーツ政策でも、スポーツ人口は単に競技を実施する人だけではなく、観戦する人、支える人、イベントに集まる人まで含めて広く捉えられるようになっています。スポーツに関わる人の範囲は非常に広いです。自分自身が競技者でなくても、観戦者としてスポーツに強い関心を持ってきた学生であれば、むしろスポーツビジネスやスポーツ文化を考える上で重要な視点を持っている場合もあります。


 スポーツビジネスやマーケティングを学ぶと、純粋に観戦を楽しんでいた人も、試合そのものだけでなく、会場の看板、スポンサー、放映権、配信、観客動員、イベント設計など、舞台裏の仕組みに目が向くようになります。


 また卒業後のキャリアの1つとして『スポーツマーケティング』がありますが、こちらは大きく2つの方向があります。1つはマーケティング・オブ・スポーツです。これはスポーツそのものの価値を高め、観客やファン、地域、企業をつなげていく考え方です。もう1つはマーケティング・スルー・スポーツです。これは企業がスポーツを活用して、自社の商品やサービス、ブランド価値を高めていく考え方です。


 たとえば、企業が日本代表チームやスポーツイベントと関わるとき、その企業はスポーツを通じて何を伝えたいのか、どのような顧客とつながりたいのかを考える必要があります。かつて、こうした仕事の多くは広告代理店が担っていました。しかし、近年はメディア環境が変化し、企業が直接スポーツ団体やイベントと関わる機会も増えています。テレビだけでなく、配信サービスやSNSを通じてスポーツの価値を届ける方法も広がっています。


 大学院では、社会人や元競技者が学ぶこともあります。競技生活を終えた後、自分の経験をどのように社会に生かしていくのかを考える人にとって、大学院は知識を得る場であると同時に、ネットワークを作る場でもあります。自分の競技経験を出発点にしながら、ビジネス、教育、地域、キャリア支援などへ視野を広げていくことができます。


 そしてスポーツは料理に似ています。和食、中華料理、イタリア料理がそれぞれ異なるように、野球、サッカー、柔道、ハンドボール、eスポーツもそれぞれ異なる文化やルール、歴史を持っています。自分の競技だけですべてのスポーツを語ることはできません。だからこそ、研究室では、学生それぞれの経験や関心を出発点にしながら、スポーツ全体を支える構造や社会的意味へと視野を広げていくことを大切にしています」

写真 ゼミ合宿の様子

■早稲田大スポーツ科学部を目指す学生へのメッセージ

 「早稲田大スポーツ科学部を目指す高校生には、まず、自分がなぜスポーツ科学を学びたいのかをよく考えてほしいです。早稲田大に行きたいというブランドへの憧れだけで学部を選ぶ人もいると思います。しかし、スポーツ科学部では、スポーツを単に好きだというだけではなく、スポーツを通じて何を考えたいのか、スポーツを社会や自分の人生にどう結びつけたいのかが問われます。スポーツを進学のための道具としてだけ考えている人には、大学の授業は面白く感じられないかもしれません。大切なのは、スポーツを通じて自分を理解し、自信をつけ、他者と関わり、社会を見る視点を持つことです。勝った、負けた、記録が伸びたという結果だけではなく、その経験をどのように考え、自分の言葉で説明できるかが重要です。


 学校推薦型選抜を目指す場合も、単に競技実績があるだけでは不十分です。自分がどのように競技力を高めようとしたのか、どのような工夫をしたのか、失敗から何を学んだのかを自分の言葉で説明できる必要があります。先生やコーチに言われたことをそのままやっただけでは、小論文や面接で自分の考えを伝えることは難しいです。スポーツを通じて何を学び、どのように成長したのかを日頃から考えておくことが大切です。一般選抜を含めて、私が特に強調したいのは英語です。スポーツは世界とつながっています。海外の試合、メジャーリーグ、サッカー、オリンピック、eスポーツなど、スポーツを深く知ろうとすれば英語に触れる機会は非常に多いです。受験のためだけに英語を勉強しようとすると苦しくなることもありますが、自分の好きなスポーツを入口にすれば、英語への関心を持ちやすくなります。


 YouTubeで海外のスポーツ映像を見るなら、英語で見てみる。実況を英語で聞いてみる。そうした積み重ねが、受験にも大学での学びにもつながります。


 総合型選抜などで出題される小論文(一般入試では総合問題に含まれる)についても、スポーツ科学部では非常に本質的な問いが出されることがあります。たとえば、『この世からスポーツがなくなったらどうなるか』という問いに対して、スポーツの社会的機能を理解していれば、教育、健康、地域、文化、コミュニケーション、自己理解など、さまざまな観点から考えることができます。


 また、過去には『じゃんけんの選択肢『グー』『チョキ』『パー』に、『キュー』という選択肢も加えた新しいゲームを考案しなさい』というような問題もありました。ここではルールそのものを自分で考え、ゲームを成立させる自由な発想が求められます。スポーツは決められたルールに従うだけのものではなく、参加する人に合わせてルールを変え、楽しさや公平性を作り出すものでもあります。スポーツのゲーム性を主体的に捉え、ルール自体を変えられる着想や新しいゲームを作り出すアイデアが求められているというわけです。他にも、『大学生は大人だと思うか、子どもだと思うか』など、興味深いテーマが数多くあります。こうしたテーマについては、普段から考えていなければ、なかなか書けるものではありません。大学のホームページには過去問も掲載されていますので、ぜひご覧ください」

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