特集 大学での学びの内容を知る③(化学系) part1

特集 大学での学びの内容を知る③(化学系) part1
特集 大学での学びの内容を知る③(化学系) part1

「大学での学びの内容を知る」をテーマに大学の先生方のインタビューを交えながら大学での学びについて紹介する企画の第3弾である今回は、「化学系の学び」をとりあげる。化学は、物質の構造や性質、反応を解き明かし、新しい材料や技術へと応用する学問である。プラスチックや医薬品、化粧品といった身近なものから、環境・資源やエネルギーの課題への対応まで、その成果は暮らしと社会の幅広い領域を支えており、近年は基礎研究を社会実装へとつなぐ実学としての側面にも関心が集まっている。今回の特集では、大阪大工学部応用自然科学科、佐賀大コスメティックサイエンス学環の学びの内容を紹介する。大学で何を学ぶべきか、大学選びの参考にしてもらいたい。


1⃣化学系の学びの実例~大阪大工学部応用自然科学科~

大阪大は1838年に緒方洪庵が開いた私塾である適塾を原点とする、「『知の創造、継承及び実践』を使命とし、『地域に生き世界に伸びる』をモットーに、学問の独立性と市民性を備えた世界水準の高度な教育研究を推進し、次代の社会を支え、人類の理想の実現を図る有能な人材を社会に輩出すること」を目的とする大学である。その中で工学部は、1896年に全国で2番目の官立工業学校として設立された大阪工業学校を源流とし、2026年に創始130周年を迎えた、最先端の研究成果を実際に世の中に役立てる「実学」を設立当初から重んじてきた学部である。現在は応用自然科学科、応用理工学科、電子情報工学科、環境・エネルギー工学科、地球総合工学科の5つの学科で構成されている。具体的な学びの内容として、大阪大工学部応用自然科学科・応用化学コースでは、1年次に「線形代数学」や「力学通論」などの講義で自然科学全般の基礎を固めつつ、「化学基礎論A」で高校化学から専門化学への橋渡しを行い、基礎的な化学実験で実験の基本操作を身に付ける。2年次以降は、「物理化学」「無機・分析化学」「有機化学」を3本の柱とする講義で物質の構造や反応、解析法を体系的に学び、演習で理解を確かめて、各分野の実験科目で自ら手を動かして専門技能を磨く。並行して「化学英語演習」や「ゼミナール」で研究に必要な英語力と発表能力を養う。4年次には研究室に配属され、「卒業研究」で課題設定から実験、卒業論文の執筆・発表までを一貫して経験する。

図1 大阪大工学部応用自然科学科応用化学コースカリキュラムマップ


〈大阪大工学研究科応用化学専攻 宇山浩教授インタビュー〉


「私は30年ほど、『環境に優しい』というキーワードで研究を続けてきました。今でこそ環境という言葉は多くの人から関心を集めていますが、私が大学の助手として研究を始めたのは、まだそれほど意識されていない時代でした。『環境に優しい』という言葉は本当は気をつけないといけない言葉です。言ったもん勝ちになりやすいですし、ある指標で『環境に良い』とされる技術や行為が、別の側面では環境を破壊しかねないものであることもあります。ですから、『環境に優しい』と主張する場合には、本当に環境に良いのかどうかを、きちんと考えて言わなければいけない、というのが私の基本的な姿勢です。

私の研究の入口は漆でした。漆は日本の伝統的な素材で見た目も良く性能面でも優れた素材ですが、かぶれますし、国産のものは今ほとんどなく値段も高価です。そこで、漆を人工的に作れないか、という発想から研究を始めました。原料として使ったのはカシューナッツの殻の油でした。カシューナッツは、中身は食べられますが、殻に含まれる油は、食用にはならず、十分に利用されていない資源でした。それを使うことで、これまで十分に利用されていなかった資源を有効に使える上、石油などの化石資源への依存を減らせる点を高く評価しました。

その後、植物油脂、なかでも大豆油の活用に着目しました。大豆は皆さんもよくご存じの身近な作物かと思いますが、この大豆油を用いた屋根用の塗料は、石油などの化石資源の使用を減らせる材料です。大学の研究をそのまま実用化に移すのはとても難しいことなのですが、こちらはご縁のあった企業が私たちの技術の一部をうまく取り入れてくださり実用化されました。

また、縁があり発見した手法の中で面白かったのが服のリサイクルに関する技術です。皆さんが着ているシャツも、多くはポリエステルと綿が混ざっています。こうした素材は、それぞれを分けて再利用することが難しいため、着なくなった服を集めても、まだ着られる服として誰かに使ってもらう以外の出口がなかなかありません。そんな中、電子レンジの仕組みを使って、綿を残したままポリエステルだけを分解し、工業的に衣服を作る一歩手前の素材の状態まで戻す、という手法を見つけました。仕組みとしては極めて単純で、適切な触媒と環境があればほんの数分でできてしまいます。

自然のものや生分解性のものを扱ううちに、でんぷんやセルロースといったバイオマス、さらには工業の現場で必ず出る廃材の有効利用へと関心が広がっていきました。たとえば、医薬品やサプリメントに使われるソフトカプセルの製造工程では、余ったゼラチンが廃材として出てきます。これを、自然界に還る生分解性プラスチックの一部として混ぜて使うといったこともしています。

今の私の研究の大きな柱は、資源をいかに循環させるか、という『資源循環』です。スーパーやコンビニに行けば食べ物も生活用品もほとんどはプラスチックに包まれているように、現代人にとってプラスチックはもっとも接する機会の多い素材の1つです。しかし、こういった包装や容器は使ったらすぐ捨てる、といった形で、1回切りの利用が想定されていることがとても多いです。こういった使い捨てを社会全体で減らし、製品をできるだけ長く使い、使い終わった資源も次のサイクルでもう一度利用していこう、という考え方が『サーキュラーエコノミー』です。『リサイクル』が廃棄物を資源として再利用する技術とすると、『サーキュラーエコノミー』は社会全体のしくみとしてとらえる考え方なんですね。

図2 宇山教授の研究図


正直にいえば、私は自分の作るバイオベース材料が万能だとは思っていません。ポリエチレンやポリプロピレンといった一般的なプラスチックは、化学の目で構造を見ると、本当によくできていて優秀です。バイオベースの材料にも良さはありますが、性能面だけで評価するとやはり従来のプラスチックを利用する方がいい場面も多い。だからこそ、それをどう賢く使い、どう資源として循環させるかが大事なのです」

写真1 研究室の様子

  • 一日体験 導線
  • 個別相談 導線
  • 資料請求 導線
  • 一日体験 導線
  • 個別相談 導線
  • 資料請求 導線
全国 学校のお天気 大学案内 大学入試偏差値ランキング 過去問データベース 入試日程カレンダー 大学入試科目検索システム
    東進ドットコム >  TOSHIN TIMES > 特集 大学での学びの内容を知る③(化学系) part1
LINE twitter Instagram Facebook