


トップリーダーと学ぶワークショップ ぴあ株式会社 代表取締役社長矢内廣先生①


研究やビジネスの最前線を走る「現代の偉人」を講師に迎える「トップリーダーと学ぶワークショップ」。今回は学生時代に情報誌『ぴあ』を創刊して起業し、後に上場企業にまで育て上げた矢内廣先生をお招きして「動かない岩を動かす。」をテーマに、事業展開を支えた思いと出会いについて講演いただいた。
必要なのにない。それなら創り出せばいい。
大学4年生のときの話だ。ちょうどそのころ、テレビ局で一緒にアルバイトをしていた友だちと「そろそろ就職を考えないとな」などとよく話していた。そうは言いながらも大学を卒業し就職して企業で働くというのがなんかしゃくだったのだ。
今なら就職してからでも、かなり自由に人生を変えられる。けれども、50年前の就職とは、一度決められたレールに乗せられると、一生そのレールの上を走り続けなければならないイメージだった。それは嫌だな、じゃあどうしようかと話しているうちに、自分たちで仕事をつくってしまおう、そうすればサラリーマンにならなくていいじゃないかと思いついたのだ。
では、何をやるのか。最初は店舗を伴う、自分たちの身近な販売のお店の案が出てきた。ただいずれも「これくらいならできそう」レベルの発想でしかない。この先の人生を賭けるのだから、今までなかったもの、こんなものが欲しかったんだと人から喜ばれるものを創り出したいと考えた。
そこでひらめいたのが映画だ。実は私は映画研究会に入るほどの映画好きだった。ところが当時は自分の観たい映画を、いつ・どこでやっているのかがわからない。上映情報を一覧で紹介しているメディアがなかったのだ。それなら自分たちで映画情報をひとまとめにした情報誌を創ってしまおうと思いついた。
これが『ぴあ』の原点だ。映画だけでなく都内の演劇・音楽・美術など「いつ・どこで・誰が・何をやる」という情報だけが載っている。主観的な評論などは一切なし、情報提供に徹したそれまでなかった雑誌、だからネーミングも敢えて意味のない言葉を選び『ぴあ』と決めた。(資料1)
