


知のフロンティア研究最前線 京都大学山下真由子先生①


きっかけは数独やパズル 幼いころの興味が原点
今回、ナガセ賞特別賞に輝いたのが、京都大学で数学の研究に取り組む山下真由子先生だ。数学の幾何学・トポロジーという分野で、特に理論物理学と関連した研究(数理物理)に取り組んでいる。幾何学・トポロジーとは、中高までで扱う平面図形や立体図形を発展させた分野である。その中でも代数トポロジーとよばれる分野を専門としている。
高校時代に数学オリンピックに出場して銀メダルを受賞した経歴を持つ山下先生は、数学の魅力をこう説く。「数学は、見た目は異なる現象でも同じ公式で説明が出来たり、複雑に見える現象でもシンプルにひも解くことが出来たりする点が、大きな魅力です」
最近では、物理学者と共同研究を行い、数学を使って物理学の問題を研究したり、物理学から生まれた数学の問題を研究したりしている。山下先生の研究がなぜ物理学と関係するのかというと、近年、物理学(素粒子、物性)における分類問題に対して、代数トポロジーが有用だとわかってきたからだ。そして今、注目を集めている分野でもある。
「そもそも数学を好きになったのは、小学生の頃に夢中になった数独やパズルの存在です。算数は得意でしたが"好き"という感覚はありませんでした。その思いが大きく変容したのが、高校時代に挑戦した国際数学オリンピックでした」。たまたま数学オリンピックの過去問を解いてみたら、最初の数問を解くことができた。この数問の正解をきっかけに”私も挑戦できるかもしれない"と思った。「数学オリンピックには、同じように数学に魅せられた同年代の人がいて、天才のように思えた人も難しい問題には悩んだり間違えたりする姿に、"同じ生身の人間なんだ"と感じるようになりました」。そしてそれは手が届くはずがないと思っていた「数学」の世界に挑戦する、大きな後押しとなった。