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トップリーダーと学ぶワークショップ 筑波大学 柳沢正史先生②

トップリーダーと学ぶワークショップ 筑波大学 柳沢正史先生②
トップリーダーと学ぶワークショップ 筑波大学 柳沢正史先生②

本記事はトップリーダーと学ぶワークショップ 筑波大学 柳沢正史先生➀の続きの内容です。こちらも併せてご覧ください。


研究やビジネスの最前線を走る“現代の偉人”を講師に迎える「トップリーダーと学ぶワークショップ」。今回は睡眠研究で画期的な成果をあげて、2022年に続き、2023年9月にも世界的な賞を受賞された柳沢正史先生をお招きし「睡眠の謎に挑む」をテーマに、睡眠の定義から最新の睡眠研究などについてご講演いただいた。今回は講演から一部を抜粋して紹介しよう。



いまだにわからない眠気の正体  

 睡眠の制御に関係しているのが「眠気」です。ただ眠気の脳内の実体はわかっていません。一方で眠気の調節の現象面はよく研究されていて、「恒常性制御」と「体内時計による制御」が知られています。


 起きている間に眠気が蓄積されていき、眠っている間に睡眠要求が解消される仕組み、これが恒常性制御です。ただしこれだけだと、一番眠くないのは朝起きたときで、それから時間が経つにつれて眠くなるはずですが、実は夜の9時ぐらいが最も眠くない時間です。これは体内時計の仕組みにより、覚醒方向のシグナルが出るためです。


 全身のマスタークロックは、視床下部の底に位置する「視交叉上核」にあります。大きさは直径1ミリ程度、神経細胞の数は数万個と非常に小さな構造ながら、この細胞が体内時計を刻んでいます。強い短波長の光が目に入ると、視交叉上核に伝わり、朝のシグナルとして受け止められます。だから晩になったらブルーライトを避けたほうがよいのです。


 体内時計のメカニズムはわかっているけれども、それが具体的にどのように眠気を制御しているのかは、まだ不明ですが、体内時計と眠気をつなぐものとして提唱されているのが、ホルモンの一種「メラトニン」です。メラトニンは夜の11時頃から朝の7時ぐらいまでの間だけ分泌されます。そしてメラトニンが出ている時間帯はよく眠れる。ところが夜に強い光を目に入れると、メラトニンが抑制されるため眠れなくなります。体内時計のリズムについては、子どもの頃が朝型、思春期から20代にかけて夜型になり、そこから年齢を重ねるに連れて再び徐々に朝型に戻っていきます。このリズムの変化に注目してアメリカでは「スタートスクールレイター運動」が行われました。高校生を朝早く起こすのはよくないから、学校の始業時間と終業時間を2時間ぐらい遅らせた結果、成績が良くなったと報告されています。



偶然からスタートした睡眠研究  

 私の睡眠研究は、脳内物質オレキシンの発見から始まりました。ただ新しい物質を見つけたけれども、当初はその役割がよくわからず、食欲を抑制する物質として論文を発表しました。


 次の段階として、遺伝子操作によりオレキシンを作れなくしたマウスを作り、どのような状態になるのかを調べました。ところが、このオレキシン欠乏症マウスは基本的に健康で、普通のマウスと比べて異常な点は見つかりません。

 

 なにかおかしいと考えた末に、マウスが夜行性動物であることに気づきました。そこでマウスにとっては寝ている時間帯となる昼間の行動ではなく、積極的に活動する夜間の様子をビデオ撮影して観察しました。するとオレキシン欠乏マウスは突然、発作的に行動停止して倒れてしまうのがわかったのです。覚醒からいきなりレム睡眠様の状態に飛んで倒れてしまう。明らかに何らかの異常が起きています。


 これはナルコレプシーという覚醒障害の一つだったのです。ヒトでナルコレプシーの患者さんの脳を調べると、オレキシンが欠乏している事実が明らかになりました。オレキシンの発見により、脳で睡眠と覚醒を切り替えるメカニズムがわかってきました。その結果オレキシンの作用を抑える薬が、新しいタイプの不眠症の治療薬として臨床応用されています。この薬は飲み続けてもくせにならない睡眠薬として注目されています。


 さらに研究を進めた結果、シナプスで機能するタンパク質のリン酸化の状態が、眠気の正体の一つではないかとの仮説を得ました。この論文は2022年末に『Nature』に掲載されています。


 今取り組んでいるのが、不眠症の客観的な診断です。不眠症とは今のところ、基本的に患者さんの主観的な訴えだけによって診断される疾患です。けれども客観的に睡眠状態を評価すれば、不眠症を訴えている人の中にきちんと眠れている人もいます。ただ睡眠脳波の測定はあまりにも大掛かりな検査である点が問題なのです。


 そこで在宅で簡単に自分で睡眠脳波を測定できるシステムを開発しました(資料3)。この測定デバイスを使って自分で計測すればレポートが送られてきます。かつて家庭用の血圧計が開発され、誰でも家で血圧を簡単に測れるようになった結果、高血圧に対する意識が高まり脳卒中の患者さんが激減、高血圧の治療についての教科書が書き換えられました。これと同じことを睡眠障害の治療で起こして、不眠などに悩む人を救いたいのです。


 最後に皆さんへ四つのメッセージを贈ります。第一は、人と違っているのを厭わない人になってください。第二は、良い問いを考える能力を大切にしてください。第三は、一度は外国で暮らすことを考えてください。第四に、特に研究者を目指す人は「真実は仮説より奇なり」という言葉をいつも心に留めておいてください。



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