


特集 受験費用・学費・奨学金の基礎知識①


東京大が授業料の値上げ検討を発表した。標準額の120%までの値上げが可能なので、その場合は約10万円値上げされ、年額約64万円となる。
一方で、大学生のおよそ5割が「貸与型」も含め何らかの奨学金を受給している。2020年度からは国の高等教育の修学支援新制度が始まるなど、返還不要の「給付型」奨学金も増加傾向にある。経済的理由から進学をあきらめてしまうことがないように、国や各大学の奨学金制度を調べておこう。
今回の特集では、受験料(入学検定料)、入学金、学費や奨学金など大学受験に関する費用について解説する。
1 大学進学にかかる費用
大学進学から卒業するまでには受験料や学費など、さまざまな費用が必要となる。どれくらいお金が必要となるのかを、3項目に分けて見ていこう。
⑴大学受験にかかる費用
まずは大学を受験するためにかかる費用から見ていこう。日本政策金融公庫の調査によると、2021年度の受験料や交通費等を合わせた受験費用は、国公立大学で27.7万円、私立大学文系で31.3万円、私立大学理系で32.2万円であった。

受験費用についてさらに詳しく見ていく。まず必要なものは「願書」だ。願書は、国公立大学・私立大学ともに9月~12月の期間に配布される場合が多い。私立大学には無料の大学と有料(数百~千円程度)の大学がある。
近年ではインターネット出願を導入する大学が増加しており、紙媒体での願書を取りやめ、大学のホームページよりダウンロードする形を取っている大学も多い。また、紙媒体の願書の場合、学校説明会やオープンキャンパスに参加すると入手できる場合もある。
いずれも大学により扱いが異なるので、志望校のホームページをチェックしよう。また、第2・第3志望の大学についても願書を取り寄せることを忘れないようにしよう。受験間際になって慌てることがないように、受験する可能性のある大学の願書は余裕をもって入手しておこう。
次に、入学検定料(受験料)を見ていこう。まず、大学入学共通テスト(以下、共通テスト)は、3教科以上の場合は18,000円である。私立大学の受験料は、大学によって異なるが、共通テスト利用方式で15,000円程度、一般方式で30,000円~35,000円程度(医歯学部等)である。私立大学の共通テスト利用方式は、各大学の個別試験を受ける必要がなくても、共通テストとは別に受験が必要となる。国公立大学の2次試験の受験料は各17,000円である(例えば、前期日程と後期日程の両方を受験すると34,000円となる)。
このように、受験するだけでも費用がかかる。例として、国公立大学志望者の場合で、国公立大学の前期日程と後期日程の試験と、私立大学3校(共通テスト利用方式1校、一般方式2校)の計5校を受験する場合について計算すると、受験料だけで約130,000円の費用がかかることになる。
なお、私立大学を受験する場合で、同じ大学内で併願する場合や、同じ学部を複数の方式で受験する場合、受験料の割引を行う大学が増えている。例えば中央大では6学部共通選抜において、複数の学部や教科型を併願する場合は1出願だと35,000円だが、2出願目以降から1出願につき15,000円になる(2024年度実績。2025年度入試からは国際経営学部を除く5学部共通選抜に変更)。割引については大学によって異なるため、各大学のホームページをチェックしよう。

また、自宅からは通学できない大学を受験する場合、受験料とは別に試験会場までの交通費や宿泊費が必要となる。しかし大学によっては、所在地以外の主要都市などで「地方会場入試」を実施しているケースも増えている。表2に例として同志社大の2024年度一般選抜の試験会場をまとめた。ほかにも、青山学院大では、2024年度入試の全学部日程で「青山キャンパス」のほか、「横浜」、「名古屋」、「福岡」にも試験会場が設置された。自宅の近くで受験可能な試験会場があれば、それを利用することで交通費や宿泊費を抑えることができる。地方試験会場での受験が可能かどうかもあらかじめ確認しておこう。
