新年度特別招待講習 新年度特別招待講習

大学での学びの内容を知る(映像メディア系)③

大学での学びの内容を知る(映像メディア系)③
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映像メディア系の学びの実例➁~立命館大映像学部~

 立命館大映像学部は、映像と人間の関係に対する深い理解を育み、映像を通じて社会に貢献する人材の育成を目指している。そのために、アート、ビジネス、テクノロジーを融合した「映像学」教育を実践し、「プロデューサー・マインド」を育成するカリキュラムを編成している。

 カリキュラムは5つの「学びのゾーン」(映画芸術、ゲーム・エンターテインメント、クリエイティブ・テクノロジー、映像マネジメント、社会映像)で構成されており、学生はこれらを横断しながら学修を進める。

 「映画芸術」ゾーンでは映画制作や理論を、「ゲーム・エンターテインメント」ゾーンではゲームデザインや新メディアの創造を学ぶ。「クリエイティブ・テクノロジー」ゾーンでは最新の映像技術を探求し、「映像マネジメント」ゾーンでは映像産業のビジネスモデルやマーケティングを学修する。「社会映像」ゾーンではドキュメンタリー映像や映像アーカイブなど、社会と映像の関わりを学ぶ。

 これらの学びを通じて、学生は理論と実践を往還的に学習し、映像を用いた社会課題の解決と価値創造を追求する。また、身につけた知識やスキルを外部に発信し、客観的な評価を受けながら学びを発展させる「アウトプット」も重視している。

〈立命館大映像学部 井上明人准教授インタビュー〉

 立命館大映像学部の井上明人准教授は「ゲーム」を対象として研究を行っている。その内容を尋ねてみた。「私が取り組んでいる主要なテーマの一つが『ゲームとは何か』を考えることです。『ゲーム』という言葉は、コンピューターゲームやボードゲームなどのような、私たちが当然ゲームであると認識しているものだけでなく、恋愛や国際関係、ビジネスの世界でも頻繁に使用されています。つまり、ゲームは私たちが世界を理解するための重要な概念となっているのです。しかし、いざ『ゲームとは何か』、つまりどのような条件がそろっていると『これはゲームだ』と判断できるのか、と問われると、一言で表すことは難しいと思います。このゲームという概念についても研究はなされてきたのですが、他の抽象的な概念(例:正義、物語、平等)と比べると、ゲームを研究する人の数は相対的に少ないのが現状です。

 『ゲーム』の定義については、多くの研究者がさまざまな角度から議論を重ねてきました。例えば、ルールの存在やゴール・目的の重要性を強調する見方があります。また、ゲームを人間の学習プロセスの縮図と捉える考え方もあります。この視点では、ゲームをプレイすることで何かを学んだり身につけたりする過程を重視し、人間の能力が最適化されていくプロセスがゲームであることにとって重要であると考えています。さらに、ゲームをコミュニケーションの媒介様式として捉える研究者もいます。例えば、新しいクラスメイトとトランプゲームをすることで自然とコミュニケーションが生まれるように、ゲームは人間関係をつなぐ役割を担うことがある点もゲームのひとつの重要な側面です。

 私は『ゲーム』という対象を専門に研究を行っていますが、ゲームという概念はさまざまな学問分野と関連しており、経済学、法学、社会学、政治学など、多岐にわたる分野でゲームの概念が登場します。ゲーム研究を通じて、これらの多様な専門知識に触れることができるのがゲーム研究の魅力の一つです」現代社会はあらゆるものがゲームと結びついており、かつてないほどにゲームにあふれている。このような『ゲーミフィケーション(ゲーム化)』について井上先生に聞いてみた。

 「従来、ゲームは時間的・空間的に明確に区切られた領域で行われるものでした。例えば、サッカーの試合では、時間と場所が限定され、プレイヤーとそうでない人が明確に区別されます。これを『マジックサークル』と呼びます。カードゲームやデジタルゲームにしても、同じようにゲームをするという行為は特定の場所やまとまった時間を前提としていました。しかし、スマートフォンの普及により、この境界が曖昧になってきました。例えば、『ポケモンGO』のようなゲームでは、街を歩いている人が目的地に行く途中でふと立ち止まってゲームをし、またすぐに目的地へ向けて歩き始めるといったように、現実世界とゲーム世界の境界が極めて曖昧です。いつでもどこでもゲームをすることができるようになり、ゲームと日常生活の境界が消失しつつあるのです。

 この状況の中で注目されるようになったのが『ゲーミフィケーション』という概念です。ゲーミフィケーションとは、日常生活や仕事の中にゲームの要素を取り入れることで、人々の行動や意識を変える試みを指します。この概念は2011年頃からアメリカのシリコンバレーで流行し始め、その後日本にも広まりました。日本語では『ゲーム化』と訳されることもありますが、この言葉が指す対象は単純にゲームにするということではありません。むしろ、ゲームの持つ魅力的な要素を他の分野に応用する試みといえるでしょう。英語圏では、ゲーミフィケーションという言葉自体が一般的になり、厳密な定義にこだわらずに広く使われるようになってきています。一方、日本ではなじみが薄いかもしれませんが、『ゲーム感覚で~』といった表現があるように、概念自体はすでに浸透しているように感じます。

 ゲーミフィケーションの応用例は多岐にわたります。教育、健康管理、環境保護、ビジネス、マーケティングなど、さまざまな分野で活用されています。例えば、私は2011年の東日本大震災後に友人と節電アプリを開発したのですが、その内容は電気使用量を『戦闘力』に見立ててSNS上で共有できるゲームでした。節電という、そのままだと我慢の要素が強い行動に対して、より高い『戦闘力』を目指すというゲームの要素を付加したことでモチベーションを持たせたという面で、ゲーミフィケーションの一例といえるでしょう。このように、企業や個人だけでなく行政や国家など、ターゲットに特定の行動をとってほしい(商品を買ってほしい、選挙に行ってほしい等)主体にとってゲーミフィケーションはとても重要な概念となっています。

 しかし、ゲーミフィケーションには課題もあります。例えば、受験勉強をゲーム化することを考えてみましょう。受験勉強には明確なゴールがあり、何をすれば点数が取れるかも明確です。成長も感じられ、フィードバックもあります。これらの要素だけを列挙すると、受験勉強の特徴はゲームとよく似ています。しかし、なぜか多くの人にとって受験勉強は面白くありません。これは、ゲームの本質的な魅力が単にルールやゴールだけではないことを示しています。ゲームの楽しさの一つは、自発的に参加できることにあります。強制されたり、やりたくないときにやらされたりすると、たとえゲーム的要素があっても楽しくなくなってしまうのです。

 したがって、ゲーミフィケーションを効果的に活用するには、単にゲーム的な要素を取り入れるだけでなく、参加者の自発性を引き出す工夫が必要です。例えば、クラス内で友達と成績を競い合うような要素を取り入れたり、勝負が成立するように点数に対してのハンデを適切に調整したりすることで、より良い点数をとることに対する興味を引き出せるかもしれません。ゲーミフィケーションは、単に表面的なゲーム要素を付け加えるだけでは、長期的な効果は期待できません。しかし、適切に設計・実装されれば、学習や行動変容を促す強力なツールとなる可能性を秘めており、その方法論についてはさまざまな方面から強い関心を示されているのです」

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