夏は"受験の天王山"。受験生はもちろん、高2生、高1生にとっても、一年で最もまとまった時間を活用できる重要な期間です。この夏をどう過ごすかで、今後の人生は大きく変わっていくでしょう。今号をきっかけに、これから生きていく時代と、勉強や努力の意味を、皆さんに今一度考えてもらい、そのうえでこの夏休みを実り多きものとして過ごしてほしいと思います。今回は高校生に向けて、東進の永瀬昭幸理事長からのメッセージをお届けします。

学習の"質×量"を確保して限界突破の大冒険を！

　一年の中でも「質」×「量」の学習時間を確保できる夏休みは、"受験の天王山"と呼ばれる重要な時期です。周到な準備と迅速な行動で勝負を決し、天下人への道を切り拓いた豊臣秀吉のように、飛躍の大チャンスと言えるでしょう。

　志望校合格には、過去問演習を徹底的にやりこみ、解答への思考を反射的にまで高めることが肝要です。そこから逆算し今すべきことを明確にして、集中して効率的かつ大量に学習を進めてください。

　「現役生は最後に伸びる」。その源は、この夏に蓄えた力です。

　高2生は、できるだけ早く過去問演習に取りかかれるよう、先取り学習を徹底するとともに、解法の定石をしっかり自分のものにしてください。この夏から受験生という覚悟を持つのもいいと思います。

　高1生は、基礎を取りこぼしなく自分のものにしてください。目に見える結果がすぐ出なくとも、一年後には目を見張る効果が出ます。苦手教科はノビシロです。好き嫌いをなくせば、世界は広がります。

　どの学年でも大切なことは、自分の限界ラインを自分で引かないことです。無理とも思える目標を具体的に掲げ、期限を決めて圧倒的努力でやり切る。そんな限界突破という大冒険を、この夏ぜひ成し遂げてください。

　また、自分の将来を考える時間を作ってください。興味・関心を深く掘り下げ、ときには大人の言うことにも耳を傾け、自分の人生の夢、目標を具体的に思い描くのです。それが後々、君たちをもっと強くします。

ＡＩが世界を変えるんじゃない君たちが世界を変えるんだ

　AIの進歩のスピードには目を見張るものがあります。人間と変わらぬ知能を持つとされるAGI（汎用人工知能）の登場も時間の問題と言われ、2030年までには、人間の知能と遜色がなくなり、2040年代には人類の知能を凌駕する「シンギュラリティ」が起こると言う専門家もいます。

　そんな時代のただ中で社会の中核を担い、AIという最強の道具を使いこなして、まったく新しい未来を作っていくのが、まさに君たちです。

　従来の指針では役に立たない、混沌の時代かもしれません。けれど、"自ら求め、自ら考え、自ら計画・実行する"人間力が芯にあれば、どんな時代になろうとも最大限の力を発揮し、リーダーとして大活躍できます。

　受験勉強は、その力を身につける絶好の機会。本気で努力するからこそ、人間的成長が得られ、志望校合格に結びつくのです。

　努力なしで成功できる時代などあったためしはありません。それなりに努力すれば、それなりに成功した時代も過去のものです。情熱を持って圧倒的努力をする。それこそが成功を収める唯一の道なのです。

　東進の校舎には、志望校合格という同じ目標を持った多くの仲間がいます。その中で、まずは君自身が率先して努力をする。君が努力し頑張る姿は、仲間の努力を引き出します。そうすることでチーム全体の士気が上がり、一人では到底無理だと思われた努力を生み出すのです。君の努力が君を勝たせるだけではなくまわりも勝たせる。この経験は受験での成功にとどまらず、君にとって生涯の宝となるでしょう。

本気の努力を通して新しい自分に出会おう

　受験勉強は「結果に強く拘り努力を続ける」ものです。問題と相対することで「未知の課題に勇敢に立ち向かう心」や「難しい課題をも楽しむ好奇心」を育てます。

　また、受験当日までの学習計画は「ゴールからの逆算思考」や、複数の教科を効率よく勉強する「マルチタスクマネジメント」力を鍛え、目標達成への筋道を「大局的に俯瞰する」力を養ってくれるのです。

　受験勉強とはまさに、実社会で必要な人間力を飛躍的に向上させる実践的な練習の場なのです。

　ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手は言います。

　「練習っておもしろいんですよ。練習を通じて自分の長所や能力を『発見』することもそう。そういう『気づき』を得る瞬間があるのが練習のおもしろさ、醍醐味ですね」

　この夏、仲間とともにありったけの情熱を“練習”に注ぎ、新しい自分を発見してください。

　君たちのこの夏の健闘を祈ります。