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観光学系の学びの実例~立教大観光学部~② 

観光学系の学びの実例~立教大観光学部~② 
観光学系の学びの実例~立教大観光学部~② 

本記事は観光学系の学びの実例~立教大観光学部~①の続きの記事です。こちらも併せてご覧ください



■観光における真正性について


 高岡教授の研究のもう一つの大きなテーマが観光における「真正性(オーセンティシティ)」だ。いったいどのような研究なのか、高岡教授へ聞いてみた。「『真正性』とは、観光客が期待する『本物』と現実とのギャップに着目する概念です。観光客は往々にして、訪れる場所に対して『本物の歴史や地域文化がある』という期待を持っています。しかし、実際にはその期待と現実にはズレがあることが多いのです。

 例えば、旅行先で手に入るお土産を考えてみましょう。観光客は『その土地ならではの特産品』を求めてお土産を購入します。しかし、実際には別の地域で生産されたものが、その土地の特産品として販売されていることがあります。皆さんも観光に行った際、お土産の生産地に注目してみてください。おそらく、そのお土産がその土地で生産されたものではないといったこともあるはずです。だとするとこれは、観光客が求める『その土地ならではの特産品』だと言えるのでしょうか?

 また、観光客はそこでしか得られない『本物の体験』を求めてその土地を訪れます。しかし、『本物』とは何か。それは観光客の期待によって形作られる部分が大きいのです。そして、観光地側もその期待に応えようとします。その結果、観光地はありのままの姿ではなく、観光客が求める『本物』を用意するという状況が生まれます。このような相互作用が、観光における真正性の問題を複雑にしています。観光客の期待と現実の間のギャップ、観光地側の演出、そしてそれらの相互作用のなかで、観光客が体験するものは果たして本当に『本物』だと言えるのでしょうか?

 このように、真正性は私の観光研究の中心的な概念の一つであり、観光現象を理解する上で非常に重要な視点を提供しています」



■高岡教授のゼミでの学生の学び


 高岡教授のもとで学ぶ学生はどのようなことを研究しているのだろうか。


 「私のゼミでは、単なる知識の詰め込みではなく、自ら考え、研究する力を養うことに重点を置いています。そのための取り組みとして、3年次にグループを組み、研究に取り組んで学会発表を行ってもらっています。この発表は、学生たちがそれまでに学んだ知識や方法論を実践する機会となります。また、自分の研究をまとめ、発表するという経験は、学生たちの自信にもつながります。グループ研究では、学生たちはさまざまな観光に関するテーマに取り組んでいます。例えば、『川越市の歴史的町並みにおける世代別の観光行動の違いの分析』として、観光客の属性によって観光の形態がどのように変化するかを明らかにしようとする試みを行っているグループがあります。若者が好むスポットと、年配の方が好むスポットの違いを地図上にマッピングすることで、観光地の空間利用の実態を可視化しています。

 『築地市場の機能移転後の場外市場の変化』を研究したグループもあります。これは、観光地の形成過程を追う興味深い研究です。市場としての本来の機能を失った場所が、なぜ観光地として存続し続けるのか。そこにはどのようなメカニズムが働いているのか。こうした問いを通じて、観光という現象の複雑さを理解しようとしています。

 これらのテーマは、いずれも現代社会における観光の最先端の問題に対して疑問に思ったことを取り扱っています。学生たちは、こうした研究を通じて、観光が単に『どこかに行って楽しむ』ということではなく、社会のさまざまな側面と密接に結びついた複雑な現象であることを学んでいきます。研究の過程で必要となる基本的な調査方法については、学生たちには自分で入門書を読んだり、先輩に聞いたりして各自で学んでもらいます。質的調査の方法や量的調査の技法、統計解析の手法などは、学生自身が必要なものを主体的に選び取り学ぶことを期待しています。私の役割は、学生たちが『何が面白いのか』『何の意味があるのか』を考えられるよう導くことです。特に大切にしているのは、学生たちが最初に抱いた関心や疑問を大切にすることです。社会学者の見田宗介先生の言葉を借りれば、『初めの炎を保つこと』が重要です。研究を進めていく中で、扱いやすいテーマに逃げてしまうことがありますが、本当に自分が興味を持ったことを追求してほしいと思っています。それが、研究の面白さを保ち、深い洞察を得ることにつながると信じているからです。

 また、研究の『見取り図』を作ることの重要性も強調しています。先行研究をただ読むだけでなく、それらをマッピングし、全体の中での自分の研究の位置づけを理解することが大切だと教えています。これは、研究の独自性を見出すためにも、また自分の研究の意義を理解するためにも不可欠なプロセスです。このような指導を通じて、学生たちが単なる知識の消費者ではなく、新たな知識の生産者になることを目指しています。観光学を通じて社会を見る目を養い、世界を理解する力を身につけてほしいと考えています。

 私が学生たちに常に言っているのは、大学での学びは高校までとは質的に異なるものだということです。与えられた問題を解くのではなく、自ら問題を設定し、それを解決する方法を考え出すこと。これが大学での学びの本質です。観光という身近な現象を通じて、社会の複雑さや多様性を理解し、そこから新たな知見を生み出していくことを期待しています」



■立教大観光学部を目指す高校生へのメッセージ


 「現代社会の最も重要なキーワードの一つでもありますが、多様性を尊重するという視点は大切にしてほしいです。生物多様性、ジェンダーの多様性、宗教の多様性など、様々な多様性に対して寛容になることがとても大切です。そのためには、世界を知ることがとても重要です。世界を知れば、自分の常識が覆されたり、いろんな食べ物やファッション、景色があることに気づいたりします。そういった気づきを積み重ねて、価値観を築いていくことがとても大事です。

 ただし、単に『多様性を尊重する』ことに留まってはいけません。クリティカルシンキングも同様に重要です。今の若い人は他者の価値観を尊重する優しい人が多く、人を否定したくない、批判したくないという傾向があるように思います。それ自体はとても良いことですが、学問をするためには『人それぞれ』で立ち止まるのではなく、そこから一歩踏み込んで批判的に物事を見る力を養うことが大切です。バラバラに見える事象に補助線を引くことで、社会全体の大きな流れを理解できたり、ある視点から共通点が見えたりといったように、物事をより深く理解できるようになります。ですから、何か違和感をおぼえたり、よぎったりすることがあれば、それを無視せずに大切にしてください。そういった違和感がものを考えていくきっかけになります。

 知ることの楽しさを味わうことも大切です。知識というのは、ある物事の裏側を知るということです。例えば、私はよく学生に『サンタクロースがいると信じていたときの自分と、いないと知ったときの自分と、選べるならどちらを選びますか?』と尋ねます。ある一面から信じていたものが別の視点からは全く違う姿を持っていたことを知った時に、その発見、新たに得た知識そのものを楽しめるかどうかが大切です。知識は何かに利用するためにあるわけじゃなくて、知識そのものがすでに目的なのです。知ること・知ったことそれ自体が尊いということが、大学での勉強への向き合い方として重要になります。子供が『なぜ?なぜ?』と聞くような、そういう好奇心がとても大事だと考えています。

 大学での学びは、高校までの学びとは違います。高校での学びは与えられた問題を解くことが中心でしたが、大学での学びは問題そのものを立てることも大切です。概念や理論を使って考えることが重要になります。例えば、『社会』という概念を使うと、バラバラだと思っていたことが一つの視点で見えてくるかもしれません。そういった世界を見る目を養うこと、そのための武器や引き出しを増やすことが、4年間の大学生活の中で大切なことだと考えています。ぜひ、知ることの楽しさを味わいながら、自分の視野を広げ、深い思考力を養ってください」

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