社会を変えるデータサイエンス②
あらゆる学問領域で科学的に分析できる時代に
それに対して人文科学や社会科学、芸術、スポーツなどは、これまで科学的な手法で分析をすることが難しかった分野です。しかしデータサイエンスが登場し、世界中からデータを集められるようになったことで、あらゆる学問領域が科学的方法で探究できるようになりました。皆さんが大学でどの専門分野を学ぶとしても、その専門とデータサイエンスを融合させることが、極めて重要な時代となったのです(資料1)。
データサイエンスは、世界中の人々の意思決定のプロセスに大きな革新をもたらしています。貧困や戦争、気候変動といったグローバルな社会課題は、複雑な要素が絡み合って起こるため、理系・文系を超えた多くの知識を集結させなければ解決することが不可能な問題です。しかしデータサイエンスを活用する多様な分野の研究者が協力し合えば、そのような複雑で巨大な問題も、解決の糸口を見つけることができる可能性があります。
全学生がデータサイエンスを学べる環境を構築
そうした考えから私たちは学部・研究科を作る代わりに、全学生がデータサイエンスを学び、全研究者が研究の実践に生かせる場として「早稲田大学データ科学センター」を設立しました。センターが提供する授業は、基本的にフルオンデマンドでいつでもどこでも受講することができます。統計学、機械学習、AIなど、1年間でデータサイエンスの基本的な知識やスキルが身につくデータ科学科目は、毎年1万6千人もの学生が履修しています。この人数は専門の学部・研究科を持つ他大学に比べても圧倒的です(資料2)。
また本学でデータサイエンスを学んだ学生が、就職活動などで自分の学びの実績を明確に示せるように、センターで「データ科学認定制度」を作ったのも他にはない大きな特徴です。認定級はリテラシー級から上級まで4つあります。初級でも文科省がデータサイエンス学習で定義する「応用基礎レベル」の内容が学べ、上級を取得した学生は卒業後、データサイエンスを主な仕事にすることができるレベルの力が身につきます。つまり早稲田大学では、どの学部・研究科に入ろうとも他大学のデータサイエンス学部や研究科と同じレベルでデータ科学を学ぶことができるのです。
考え方そのものをバージョンアップしてほしい
本学では2019年から実際の企業や社会の課題を分析する「早稲田大学データサイエンスコンペティション」を毎年開催し、30?60のチームが参加して、データ分析で得られた知見の有効性や新規性を競います。衆議院選挙の結果を予想する課題では、政治経済学部のチームの分析がほぼすべての選挙結果を当てたのですが、このことからも専門知識とデータ科学を融合することの意義の大きさがわかります。
大学で学ぶことの本当の意味は、知識やスキルを得ることだけでなく、「考え方そのもの」をバージョンアップさせることにあります。データサイエンスという新しい「考え方」をぜひ本学で身につけ、生きる力として役立ててもらえればと思います。