就職からみた大学選び⑦
本記事は、就職からみた大学選び⑥の続きの記事です。こちらも併せてご覧ください。
大学卒業後の進路には、大きく分けて「大学院進学」と「就職」とがある。自分の専門分野の研究をさらに深めたい、就きたい職業に必要となる資格や知識を習得したい、裁判官や検察官、弁護士などを目指したいなど、大学院進学を選ぶ動機はさまざまだ。
今回は、「就職からみた大学選び」の後編として、大学院進学とその後の就職を紹介する。大学受験の段階から卒業後の進路の1つとして、大学院について知っておくことも有益だろう。
1.日本の大学院制度
(1).日本の大学院制度
日本には国公私立を合わせて、663校の大学院がある(2024年度「学校基本調査(速報値)」)。大学院とは、専門職や研究職を目指す大学(学部)卒業者を対象に、より高度な教育・研究を行う機関である。学部の上位機関として、大学院には「研究科」が設置されている。
大学院は大きく分けて「修士課程」「博士課程」「専門職学位課程」の3つに分類される。文部科学省が定める大学院設置基準及び専門職大学院設置基準によると、それぞれの目的は表1のように定められている。
入学資格は原則として、修士課程と専門職学位課程が学部卒業者、博士課程が修士課程または専門職学位課程修了者である。ただし、修士課程については学部卒業相当、博士課程については修士課程修了相当の学力を有すると大学院が判断した場合は、それらの学位を持たなくても入学資格が認められる場合がある。
標準修業年限は修士課程と専門職学位課程が2年(修士課程を1年間で修了できるコースが設定されている大学院もある)、博士課程が3年だが、入学前の学歴によって異なる場合がある。例えば、専門職大学院である法科大学院では、法学部卒業者など、法学既修者向けの2年課程と法学未修者向けの3年課程に分かれる。また、6年制の医学部、歯学部、薬学部、獣医学部を卒業した者を対象とした博士課程は4年制となっている。
(2).設置形態と名称
①修士課程(博士前期課程)
博士課程も併設する研究科の場合、「博士前期課程」の呼称を用いることもある。標準修業年限は2年。修了後は、「修士号」(Master’s Degree)が授与される。修了認定の際は、所定の単位を取得し、修士論文審査と口頭試験に合格することが必要とされる(研究成果のみで審査をする修士課程もある)。
修士号取得者の多くが、一般企業への就職を目指す。理系出身者の就職先として、人気の高い研究職や開発職の応募条件として、修士号取得が求められている場合が少なくない。また、公認心理師や臨床心理士、教員免許状(専修)などの資格取得を目指す場合も修士号取得が条件となっている。また必須条件ではないものの、国家資格や民間資格を取得する際に、修士号取得が有利となる場合もある。
②博士課程(博士後期課程)
「修士課程(博士前期課程)」の上位教育機関として設置され「博士後期課程」「後期3年博士課程」の呼称を用いる大学院が多い。標準修業年限は3年で、修了後は「博士号」(Doctor)が授与される。欧米圏の呼称「Ph.D.(Doctor of Philosophy)」を通称として用いる場合もある。所定の課程を修了した者に授与される「課程博士」と、在学経験がないまま学位審査に合格した者に授与される「論文博士」がある。また、在学期間を満了しながら論文審査に合格せずに「単位取得退学」した場合でも、研究業績の内容によっては一定の評価を得られることもある。
◇一貫制博士課程
修士課程(2年間)・博士課程(3年間)の区別を設けることなく、5年間の一貫教育を行う課程である。5年間通して計画的・継続的な研究に取り組めることが、利点として挙げられる。高い専門性が求められる理系分野を中心に、近年は修士課程+博士課程(または博士前期課程+博士後期課程)から一貫制博士課程に移行したり、新たに一貫制博士課程を設置したりする大学がある。
◇4年制博士課程
主に、医学部、歯学部、薬学部(6年制)、獣医学部を卒業し、各分野において教員や研究者を目指す者を対象に、高度な専門教育を行う課程である。一貫制博士課程と同様、計画的・継続的に専門性の高い研究に取り組めることが特徴である。
なお、一般的な大学の学部は4年制だが、医学部、歯学部、薬学部、獣医学部は6年制である。卒業してそれぞれの大学院へ進む場合、すぐに4年制の博士課程に在籍することになる。
医学部、歯学部、薬学部、獣医学部以外の学部卒業生が医学、歯学、薬学、獣医学の大学院に進む場合は、4年制の博士課程ではなく、2年制の修士課程に在籍することになる。
③専門職学位課程
専門職大学院に設けられ、専門性が求められる職業において必要とされる知識や能力を育成する課程である。代表的なものとして、法科大学院や教職大学院がある。経営学修士・経営管理修士(MBA)なども専門職学位課程に含まれる。