未来を拓く人材育成 東北大学①
研究と実学で鍛え 日本一、学生を伸ばす大学
東北大学は2024年6月、世界トップレベルの研究水準を目指して国が新たに支援を行う「国際卓越研究大学」に関する有識者会議により体制強化計画が審議された結果、認定の水準を満たし得るものとの結論に至った。日本を代表する総合研究大学として、若手や中堅が挑戦しやすい体制づくりに力を入れると同時に、世界中から研究者を呼び寄せる環境も整備。その将来像について冨永総長は「世界トップ レベルの研究大学をめざす」と語る。
3つの理念「門戸開放」「研究第一」「実学尊重」
東北大学は1907年、杜の都・仙台に日本で3番目の帝国大学として創設されました。極めてオープンマインドな大学であり、1913年には当時の文部省から「重大なる事件」として説明を求められながらも、国立大学として初めて3名の女子学生を入学させています。ほかの帝国大学とは違い、旧制高校以外の高等工業学校や高等師範学校の人材にも広く門戸を開いてきました。海外からの留学生もいち早く受け入れ、中国の文豪、魯迅も留学生として学びに来ています。性別や出身校、国籍などにとらわれず、優秀な人材を受け入れる精神は「東北大学DEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)推進宣言」へと受け継がれています。
設立当初からリサーチファースト、すなわち研究こそが教育の糧であると考え、世界から優れた研究者の採用に努めていました。理学部創設時には、ノーベル賞受賞前のアインシュタインを教授として招聘しようとしたほどです。大学教授として必須の条件を一流の研究者と定め、草創期の教授たちには着任前の留学が義務付けられていました。
研究により生み出された知的価値を社会に還元する姿勢も重視していて、本多光太郎先生の磁石「KS鋼」、西澤潤一先生の半導体レーザー、八木アンテナなど数多くの革新的な技術を生み出してきました。「産業は学問の道場である」という本多先生の言葉に象徴されるように、特に理工学系は企業と連携しながら研究を進めています。
これら3つの理念に支えられた東北大学は、THE(タイムズ・ハイヤー・エデュケーション)世界大学ランキング日本版で第1位、また高校の先生方による評価でも「入学後に学生が伸びる大学」として長年にわたり第1位を獲得し続けています。