


デジタル時代のパスポート 社会を変える Data Science 第12回京都大学①



京都大学は2017年に「数理及びデータサイエンスに係る教育強化」拠点校に選定されました。これを受けて新設されたデータ科学イノベーション教育研究センターでは、全学部・全回生を対象にデータサイエンス教育を行っています。その狙いとこれまでの成果、さらにはデータサイエンスを学ぶ学生への期待などについて、センター長を務める山本章博先生と国際高等教育院の原尚幸先生、田村寛先生に伺いました。
データ分析と活用により将来を推測する
そもそもデータサイエンスとは、どのような学問なのでしょうか。本学では、その定義を「データを収集してコンピュータで管理し、数理的手法を用いて分析することにより結論を導き、将来の推測を行う、情報学・統計学・数学(数理科学)の融合分野の学問」としています。
データの収集と活用は、すでに日常生活のさまざまな場面で行われています。たとえばインターネットで買物をすれば購買データが蓄積され、それに基づいてオススメ商品が提案されます。また健康管理にも各種のデータが活用されています。
現代社会ではあらゆるシーンの裏側でデータが関わっているといっても過言ではありません。そんなデータを活用するための、新しい学問分野がデータサイエンスです。
これまでにも各学部から「データを正しく読み解き、活用できる力を養う実践的なカリキュラムを作ってほしい」との要望が寄せられていました。これを受けて本学ではデータサイエンスを全学部生が身につけるべき教養科目と位置づけ、その教育を担う組織としてデータ科学イノベーション教育研究センターを設立しました。
当センターでは「統計入門」などの基礎に加えて「データ分析基礎」や「統計と人工知能」「データ分析演習Ⅰ・Ⅱ」などの科目が開講され、さらには大学院レベルの講義までも含む充実したカリキュラムが提供されています。カリキュラムは、所属する学部や学科の履修方針に従って情報学、統計学、数学をバランスよく学べるよう整備されています。本学ではデータサイエンスを、これからの社会で活躍するために必須の能力、現代の「読み・書き・そろばん」と捉えているのです。
論より証拠ではなく証拠から理論へ
よく「論より証拠」と言われています。けれどもそれでは順番が逆だと当センターでは考えています。まず証拠、つまりデータを収集して解析し、その中から論理的に理論を導き出す。このための基礎力を培うために、初年次教育では全学部生にデータを読む力を身につけるよう求めています。
「統計入門」は全学部の全回生向けであり、なかでも医学部医学科の1回生にとっては必修科目となっています。学部・学科によっては「数理統計」が指定または推奨科目として位置づけられています。理系では履修歴が、専攻を決める際の参考資料として使われるケースもあります。文系においても多くの研究室がデータを扱うため、3回生になってから履修する学生も少なくありません。
カリキュラムは、情報・ 統計に関する一般常識や基礎知識を学ぶリテラシーレベルから、データ分析の実践的な応用基礎レベルまで幅広く用意されており、学生は自分のペースで学びながら確実に実力を養えるようになっています。