


大学入試の基礎知識① ~大学の置かれた状況~


3月中旬に国公立大学の後期日程試験が実施され、2025年度大学入試もほぼ終了した。今回の特集では、1年後の2026年度入試に向け、大学入試の基礎知識を紹介する。志望校合格のためには、受験勉強も大切だが、それと同時に、志望校や入試制度等の情報収集も欠かせない。ぜひ参考にしてもらいたい。
1.大学の置かれた状況
少子化の影響で、高等学校等の卒業者数は減少傾向にある。グラフ1は、高等学校等卒業者数・大学等進学者数・進学率の推移を示したものである。
2000年には132万8940人だった高等学校等卒業者は、2024年には92万3800人に減少し、2000年比で69.5%まで減少した。一方で、大学・短大等の進学率は上昇傾向が続いており、2024年は62.0%で過去最高を更新した。2000年の45.1%から見ると、飛躍的に上昇していることがわかる。
18歳人口は減少したものの、国公立大学や、大都市圏の大規模私立大学の人気は依然として高く、多くの志願者を集めている。一方で、地方にある中小規模の大学では、「定員割れ」の状態にある大学も少なくない。つまり、大都市圏の大規模大学に志願者が集中して入学者が定員を超過し、地方の中小規模の大学に志願者が集まらず定員割れとなっている、二極化が進行しているといえる。

⑴都市圏と地方の格差に対する措置
こうした状況を是正するために、文部科学省では、2016年度以降、私立大学の定員超過に対する補助金不交付の措置を段階的に厳格化してきた。いわゆる「定員管理の厳格化」である。つまり、事前に定められた「入学定員」よりも多く入学者を受け入れる状況を正そうという措置である。
入学定員に対する入学者数の比率を入学定員充足率(入学定員超過率)といい、1.00倍を超えると「定員よりも多く入学者(新1 年生)を受け入れている状況」を示すものとなる。また、全学年の定員を合計したものを収容定員といい、収容定員に対する在籍学生数の比率を収容定員充足率(収容定員超過率)という。
2015年度までは収容定員8,000人未満の私立大学で入学定員超過率が1.30倍以上、あるいは収容定員8,000人以上の大学で1.20倍以上となった場合に、補助金が受けられなくなっていた。また、全学年の定員を対象とした「収容定員超過率」でも計算を行い、収容定員8,000人未満の大学で1.50倍以上、収容定員8,000人以上の大学で1.40倍以上となった場合、補助金が受けられなかった。
2016年度からは入学定員超過率の基準を段階的に厳格化し、2018年度以降は収容定員8,000人以上の大学で入学定員超過率1.10倍以上となった場合に、補助金が受けられなくなった。
2023年度以降は、入学定員超過率の基準を廃止し、収容定員超過率のみで判断されることになった。毎年段階的に厳格化し、2025年度は収容定員8,000人以上の私立大学は収容定員超過率が1.10倍以上となると補助金が受けられなくなる。

⑵デジタル人材育成と23区規制の緩和
一方、2018年5月には東京23区の大学の定員増を原則10年間禁じる地方大学・産業創生法が成立し、2028年3月末までの10年間は定員の増加が禁じられた。また、定員を増やせないことにより、新しい学部・学科の設立も困難となっていたが、2023年に政府は、デジタル系の学部・学科に限り2024年度から定員増を認めることとした。
日本はデジタル分野の人材不足が指摘されており、政府は2030年に先端IT人材は54.9万人ほど足りなくなるとの試算を示した(経済産業省委託事業「IT人材需給に関する調査(みずほ情報総研株式会社)」2019年3月)。文部科学省では、3,000億円の基金を活用して、大学による「デジタル」「グリーン」等の特定成長分野の学部設置等を継続的に支援する事業を2023年度から開始した。理・工・農の3分野を対象に、最長10年間、20億円程度までの支援を計画しており、「デジタル」「グリーン」等の特定成長分野に関連する学部・学科の増加が見込まれる。
⑶今後の行方
日本私立学校振興・共済事業団の調査では、定員割れとなった私立大学の割合は、ピーク時の2008年度では47.1%であったが、2017年以降徐々に減少し、2020年度には31.0%となった。しかし2021年度から新型コロナウイルスの影響もあり、再び上昇し、2022年には47.3%となり、ピーク時の2008年を超え、2023年度はさらに上昇し53.3%、2024年度は過去最高の59.2%となった(グラフ2)。
入学定員充足率の地域別の推移をみると、2016年度から2020年度にかけて、大都市圏への集中はある程度緩和されている。2021年度は新型コロナウイルスの影響により、地域を問わず全体的に下降し、2022年度は上昇に転じた地域もあったものの2023年度と2024年度は再び全国的に下降となった(表2)。
また、私立大学は入学辞退者が出ることを見越して合格者を多めに出していたが、2018年度以降は入学者数が入学定員の1.10倍を超過しないよう合格者数を絞り込んでいる(収容定員8,000人以上の大学の場合)。
現在、私立大学の59.2%が定員割れをしており、こうした状態が続くと、大学の主な収入源である授業料収入が減少してしまい、大学の経営が立ち行かなくなってしまう場合も出てくる。最悪の場合、学生募集停止から大学の閉鎖(廃校)という事態になりかねない。2024年12月の学校基本調査では、大学の数は813校で過去最多となっているが、18歳人口の減少は今後も継続するので、大学の淘汰は避けられないだろう。女子大の共学化や短期大学の募集停止の発表が相次いでおり、学生募集の厳しさがうかがえる。

