


大学入試の基礎知識④ ~一般選抜(共通テスト、個別学力試験)~


本記事は大学入試の基礎知識③ ~大学入試のスケジュール~の続きの記事です。こちらの記事も併せてご覧ください。
4.一般選抜(共通テスト、個別学力試験)
一般選抜は、主に学力試験による入試であり、通常「大学入試」といえば一般選抜をイメージすることが多い。国公立大学では、1次試験として共通テストを課し、2次試験として大学独自の試験を課している。私立大学では、主に大学独自の試験のみで合否を判定する方式と、共通テストの成績を利用して判定する方式とがある。
⑴大学入学共通テスト
2021年度入試から始まった共通テストの出題形式は、マークシート方式である。センター試験同様、アラカルト方式(各大学・学部が合否判定に用いる教科・科目を自由に設定できる方式)を採用している。2025年度入試からは2022年4月の高校1年生からスタートした新学習指導要領に対応して共通テストの教科・科目が再編されるなど大きな変更点があった。
地理歴史と公民は、両者を合わせて1教科として扱い、最大で2科目受験することができる。2科目選択して解答する場合、試験時間130分のうち前半60分で解答する科目を「第1解答科目」、答案回収のための時間10分を挟んで、後半60分で解答する科目を「第2解答科目」と呼んでいる。大学が合否判定に用いる地理歴史・公民の成績が1科目だけのときに受験者が2科目解答した場合、「第1解答科目」の成績を利用するか、「高得点の科目」を利用するかは大学・学部によって対応が分かれているので、事前に十分確認する必要がある。また、『地理総合/歴史総合/公共』を選択する場合は組み合わせて選択できない科目もあるため注意が必要だ。
⑵国公立大学の一般選抜
国公立大学の一般選抜では、1次試験として共通テストを、2次試験として各大学個別の試験を課しており、これらの成績をあわせて合否の判定を行う。大学によっては、下記のように「傾斜配点」や「2段階選抜」を取り入れているところもある。
①傾斜配点
共通テストの成績を合否判定に利用する際には、各大学が独自の配点を定めることができる。その中でも、2次試験に課されない教科や、学部ごとに専攻する学問分野に関連する教科の配点は高くなることが多い。大阪大理学部の例でみると、共通テストの国語と地理歴史・公民は50%、外国語と理科と数学は25%、情報は10%に換算されることとなっており、2次試験を実施しない国語と地理歴史・公民の配点は高く、2次試験を実施する数学と理科、2025年度から導入された情報の配点は低く換算されている。
②2段階選抜
国公立大学の中には、共通テストによって第2段階の選抜を行い、これに合格した受験生のみが2次試験を受けることができるという「2段階選抜」を行っている場合がある。通常は、第1段階で選抜する人数が事前に発表されており(募集人員の3~5倍程度のことが多い)、受験生は共通テストの成績を自己採点してこれを基に出願することになる。大学によっては、共通テストの成績は第1段階の選抜のみに用い、合否判定は2次試験の成績のみで行うところもある。
◆国公立大学の1次試験(共通テスト)
1次試験(共通テスト)では、文系学部では、外国語、国語、数学2科目、地理歴史・公民から2科目、基礎のついた理科、情報の合計6教科8科目を課す場合が多い。理系学部では、外国語、国語、数学2科目、地理歴史・公民から1科目、理科から2科目、情報の合計6教科8科目を課す場合が多い。なお、難関大学を中心に、地歴公民の『地理総合/歴史総合/公共』は選択不可としている大学が多いので、注意が必要だ。
◆国公立大学の2次試験(個別学力試験)
国公立大学の2次試験は「分離・分割方式」で実施される。これは、個別学力試験の日程と募集人員を前期日程と後期日程の2つに分けて試験を実施する方式である。なお、一部の公立大学ではこのほかに中期日程の試験を行うところもある。これによって受験生は2回(または3回)の受験機会が得られることになる。言い換えれば、2校ないし3校に受験できるということだ。
ただし、前期日程の試験で合格して入学手続をすると、中期・後期日程を受験していたとしても、合格となる資格がなくなってしまうので、通常は前期日程で第1志望校、後期日程で第2志望校に出願することになる(もちろん、両方とも第1志望校に出願してもよい)。
【後期日程について】
最近は、募集人員の一部を総合型選抜や学校推薦型選抜にあてて後期日程の募集人員を少なくしている大学が多く、また、後期日程の募集を行わない大学もある。岡山大は2023年度から全学部で後期日程を廃止した。東京大は2016年度から推薦入試(学校推薦型選抜)を導入して後期日程の試験を廃止、同じく2016年から推薦入試(学校推薦型選抜)とAO入試(総合型選抜)による特色入試を導入した京都大は、法学部を後期日程方式で実施していたが、2025年度入試から廃止した。大阪大は2017年度からAO入試(総合型選抜)および推薦入試(学校推薦型選抜)を導入し、8学部で後期日程を廃止した。一橋大は、2018年度から社会学部と法学部で後期日程を廃止すると同時に、全学部で推薦入試(学校推薦型選抜)を導入し、後期日程は経済学部とソーシャル・データサイエンス学部のみで実施。北海道大は、2022年度から医学部の後期日程を廃止した。
⑶私立大学の一般選抜
私立大学の一般選抜は、かつては大学独自の個別試験のみで行われていた。2001年のセンター試験(当時)を利用していたのは266校であったが、2025年の共通テストは、522校(約9割)の私立大学が利用している。
私立大学入試の特徴は①何校でも併願が可能である、②複数の大学に合格してもいずれの大学の入学資格も失わない、③ほぼ全ての私立大学が複数の試験日程・試験方式を設けており受験機会が豊富にあることなどが挙げられる。私立大学の一般選抜の方式にはいくつかあるが、①大学独自の試験のみで合否判定を行う「個別試験方式」、②共通テストの成績のみで合否を判定する「共通テスト単独方式」、③共通テストと大学独自の試験の両方の成績で合否判定を行う「共通テスト併用方式」の3つが代表的である。また、大学の全学部で共通の試験を行って受験生は同時に複数の学部・学科に出願できる「全学部統一方式」を導入する大学もある。
さらに、上智大の「TEAPスコア利用方式」のように、英語の外部試験と大学独自の試験を組み合わせた方式を導入する大学も増えている。ちなみにTEAP(ティ―プ)は、英検を主催・運営する日本英語検定協会と上智大が共同開発したテストであり、リーディング・リスニング・ライティング・スピーキングといった4つのテストで構成されている。
また、大学の所在地以外に試験会場を設けて(全国の主要都市で行う場合が多い)自宅から近いところの試験会場で受験することができる「地方会場入試」を行う大学も大規模大学を中心に増加している。青山学院大(全学部日程)は横浜・名古屋・福岡、明治大(全学部統一)は札幌・仙台・名古屋・大阪・広島・福岡、同志社大(全学部日程・学部個別日程)は札幌・仙台・新潟・東京・金沢・浜松・名古屋・神戸・和歌山・米子・岡山・広島・高松・松山・福岡・鹿児島といった具合だ。逆に、早稲田大や慶応義塾大などは地方会場を設けていない(2025年度入試の例)。