大学入学共通テスト徹底分析

新課程移行後、初の実施となった2025年の大学入学共通テスト。東進では、受験生と同じ日に本番と同じ問題に高2生・高1生が挑む「共通テスト同日体験受験」を実施しました。

　新課程での共通テストを体験した生徒の結果をもとに、東進の講師陣が科目別の得点状況や、今後の学習方針・志望傾向などを分析して、高校の先生方にオンラインで配信しました。ここでは、その一部を紹介します。

共通テストの壁は時間　読解力を土台に、スピーディーに解く

　2025年の大学入学共通テストの志願者数は495171人と、前年度の491915人から3257人の増加（前年比100.7％）し、7年ぶりに増加したものの、前年度入試に引き続き50万人割れとなりました。

　新課程での共通テスト実施となったため、「数学」「地理歴史」「公民」で科目構成の見直しと「情報」が加わり6教科30科目から7教科21科目に再編。試験時間も「国語」が80分から90分に、「数学②」が60分から70分に変更されました。

　出題内容は教科・科目により差はあるものの、全体的には、2022年11月に大学入試センターから公表された資料に基づいた出題でした。

　前年度までの共通テストにおける「思考力・判断力・表現力」を問う出題傾向からの大きな変化はありませんでした。身についた知識を活用し、提供された多くの「資料・表・グラフ・地図・写真・文章」を読み解き、必要な情報を抽出して最終的に適切な解答を導き出す力が求められるため、全教科ともに限られた時間の中でスピーディーに問題を解く必要がありました。

総合分析：受験生と高2生で差がついたリーディングは前半の時間管理がカギ

　英語リーディングの平均点は57.69点でした。前年比で6点以上伸び、易化したと言えます。第1問から第6問は、受験生と高2生で正答率にそれぞれ15％前後の差があり、これは学年による英語力の差です。ただし、第8問は約30％も差が開きました。これは単に学年が一つ下という英語力の差だけではありません。タイムマネジメントが上手にできなくて、第8問に時間を残せず、しっかり読めなかったのではないでしょうか。共通テストの特徴の一つが、試験時間80分に対して英文量が多い点です。試験開始から40分の時点でどこまで到達しなければならないのかを把握して、解いていくと時間配分をつかみやすいです。具体的には、第5問まで40分で到達するペースを意識するとよいでしょう。

　一方で、リスニングの平均点は61.31点でした。前年から約6点下がり難化しました。6大問構成で、正答率は第1問Aの問4が、第1、第2問を通して最も低く、高2生と受験生との間に約20％もの開きがありました。下段では、高2生の弱点が隠れているという点で特徴的なこの問題を解説します。

リスニング：単語・発音・文脈・パラフレーズ四つの土台を確立すればリスニングは怖くない

答えは①ですが、なぜ正答率が低くなったのかを考えたときに、まず英文が理解できていないことが挙げられます。読み上げられた英文を見てください。そもそもwonderの意味やfield tripの意味を知らなかった場合、単語の意味を知らないので英文が聞き取れても意味が分かりません。ですから、絶対に単語力は必要です。

　また、「英文を見れば分かったのに聞き取れなかった」という生徒がいます。これは音を正確に捉えられていません。その原因は発音にあることが多いです。正しい音声を聞いて、発音すること。特に、単語は発音と一緒に押さえておかなければなりません。そして、テキストについている音源を活用し、正しい音を聞いて読む音読が大切です。

　次に、正解の選択肢①を見てみましょう。「doesn’t know」に注目してください。doesn’t もknow も読み上げ文では使われていません。別の、異なる表現が使われているのです。それはwonderです。放送文のwonderがdoesn’t knowにパラフレーズされています。

　このように正しい答えは十中八九、読み上げ文の単語や表現をパラフレーズしています。I wonder というのは、I don’t know、ここではThe speaker doesn’t knowの言い換えです。単語・発音・パラフレーズ。この三つがリスニングの問題を解く根っこになります。

　さらにもう一つ注意したいのが文脈です。例えば、wonder はいつもdon’t knowに言い換えられるかというと、そうではない点です。文脈が変わったり、wonderの使い方が変わったりすればパラフレーズ後の言葉も変わってきます。例えばIwondered at the news.と言えば、このwonderedはdon’t know (didn’t know)ではなくてI was surprisedになるわけですね。単語の使い方や文脈を理解していなければ、正しい答えにたどり着くことはできません。