


新時代のパスポート 半導体・デジタル最前線


九州大学は2023年に「価値創造型半導体人材育成センター」を設立し、半導体産業全体を俯瞰できる人材育成に取り組んでいます。「半導体×ビジネス」「半導体×経営」といった独自の科目や学部3年生からの実践的な製造体験、さらに世界最大手 TSMCとの連携講義など、次世代の半導体イノベーターを育てる先進的な教育を展開しています。

半導体の力で社会を変える人材を育成
半導体の世界には、今大きく二つの潮流があります。一つは「微細化」つまり半導体をより小さく作り、集積度を上げる技術で、最先端の企業は2㎚(2㎜の100万分の1の長さ)レベルの半導体を実現させつつあります。もう一つは「何を作るか」、つまり半導体技術を使って新しい価値を生み出す方向です。例えば、Appleは自社のiPhoneのために特別な半導体チップを設計していますし、GoogleやAmazonは データセンターのために低電力消費に特化した半導体を自社開発しています。こうした企業は汎用的な半導体では満足せず、自社の強みを生かした設計を行っているのです。私たち九州大学はその潮流を捉え、「半導体で新しい価値を創造できる人材を育てる」を目的に2023年新たに「価値創造型半導体人材育成センター」を立ち上げました。
あらゆる産業に入り込む半導体
私たちの教育の特色は「半導体×ビジネス」「半導体×経営」といったほかの大学にはない科目があることです。「半導体技術マップ」という講義では、半導体産業の全体像を学びます。例えばシリコンウェハーという半導体を作る基板は、佐賀県の企業を含む日本の2社で世界の7割のシェアを持っていますが、入学前にそれを知っている学生はほとんどいません。現代社会で半導体はスマートフォンやパソコンだけではなく、電気ポット、冷蔵庫、洗濯機、自動車など、あらゆる電子機器に使われています。
「半導体がなければ車が作れない」と言われますが、実は日本がシリコンウェハーを輸出しなければ、世界中の他の産業も成り立たないのです。
学部3年生から半導体製造を体験できる
こうした産業全体の知識を身につけることが、将来的に大きな価値を生み出せる人材になるためには重要です。社会のニーズを踏まえ、私たちのセンターでは、①革新的な半導体を生み出せる人材②産業界で非常にニーズの高い半導体製造を担う人材、さらに③半導体を通じて社会を変革する人材を育てたいと考えています。
専門的な学びの面でも、本学では多くの大学が大学院から本格的に教える半導体製造の工程を、学部3年生で体験できる貴重な機会を準備しています。クリーンルームで熱酸化膜の形成から、パターニング、エッチングまでの工程を通して、実際に3入力のNAND回路を製作し、評価する実験を行っています。
半導体の世界トップ企業「TSMC」と連携
さらに本学のみの取り組みが、世界最大の半導体製造企業であるTSMCと連携して「AdvancedCMOS Technology」と いう講義を提供していることです。本講義では、TSMCの技術者・研究者が最先端の半導体技術について学生たちに直接教えます。日本は半導体製造において世界の最先端から2周回遅れと言われるほど遅れています。追いつくためには、トップ企業から直接学ぶことが必要です。半導体はグローバルにあらゆる産業と結びついており、将来、日本経済が落ち込んだとしても海外では必ず需要があります。広く社会に新しい価値を創造したいと考える方は、ぜひ本学で半導体を学んでみてください。
