大学での学びの内容を知る③(農学〈農業経済学〉系)Part3

大学での学びの内容を知る③(農学〈農業経済学〉系)Part3
大学での学びの内容を知る③(農学〈農業経済学〉系)Part3

本記事は「大学での学びの内容を知る③(農学〈農業経済学〉系)Part 2」の記事の続きです。そちらも合わせてご覧ください。





 神戸大は、1902年創立の神戸高等商業学校を創立の起点とし、120年を超える伝統を持つ、開放的で国際性に富む固有の文化の下、「真摯・自由・協同」の精神を発揮し、人類社会に貢献するため、 普遍的価値を有する「知」を創造するとともに人間性豊かな指導的人材の育成を目指している大学である。その中で農学部は、1949年に設置された兵庫県立農科大学を起源とし、70年以上の歴史を持ち、現在は食料環境システム学科、資源生命科学科、生命機能科学科のそれぞれに2つずつコースを持つ、3学科6コースで構成される。


 神戸大農学部は、「農場から食卓まで」をスローガンに、高品質で十分な量の食料を確保し、我々の健康・生命を維持・増進し、生命環境を保全するために必要とされる最先端の知識と技術を学ぶ。具体的には、農学部食料環境システム学科食料環境経済学コースの場合、1、2年生では、食料・農業・農村や環境に関する社会経済問題を解明できる基礎知識を学ぶ。2年生からは並行して専門的な知識を学ぶとともに、2年生後期からは少人数での演習が始まる。3年生後期からは各研究室に分属して調査研究を進め、食や地域の課題解決や新しい価値を創造する専門家に必要な知識や技術を学ぶ。また、神戸大農学部では2学期クォーター制が導入されており、前期・後期の2つの学期がそれぞれさらに半分に分けられ、それぞれ8週で授業が行われており、留学などの学外活動により取り組みやすくなっている。




■研究の概要

 「私の研究分野は農業経済学です。農業経済学は、端的に言えば食料や農場、農村に関する問題について社会科学的なアプローチで解決策を考えていくものです。生産面から生産者の経営状況や農村社会の形成、労働力などに焦点を当てて研究を行う方もいれば、農業に関連する市場や政府のはたらき、消費者の消費行動と栄養状況の関連など、多岐にわたる問題について、検討されています。その中で私は、大きく分けて消費者行動とフードシステム(流通)の2つの分野で研究を行っています。


 流通分野で興味を持っている問題は世界の食料問題です。食料は、総カロリー量の観点からのみだと世界中の全ての人たちが生きていけるだけの量が生産されています。しかし現実として実際に飢餓は生じています。その理由として、穀物をより収益性の高い飼料として畜産業で消費する、或いはバイオ燃料として消費するといったように、食料の分配方法の問題が挙げられます。その他にも、紛争の勃発や、それに伴い食料輸出を制限する国が現れるといった政治的要因や、気候変動などの環境要因など、食料を安定的に十分に得るための食料安全保障は脅かされています。これらの要因の中で、特に私は食料の分配問題、つまり穀物を畜産や燃料に供給しすぎているという問題に特に関心をもってそのメカニズムを研究しています。穀物の取引については、穀物メジャーという少数の多国籍企業( 5社) がほとんどの穀物貿易をコントロールしていると言われています。そういった穀物の取引について、フードシステムという、農産物が生産されて消費者のもとに届くまでの食料品の流通過程やそれらに関わる経済・社会制度に関するシステムがどのように機能しているのかを整理した上で、では日本がそうした国際市場の中で安定的に穀物を輸入できるのか、海外の生産者から日本の消費者までどういったルートで供給されているのか、という過程を整理しています。


 例えば、日本は大豆や菜種といった穀物を輸入していますが、これらの穀物の安定輸入という観点では各国のバイオ燃料政策は非常に大きな影響力を持ちます。化石燃料に代わるエネルギーとしてバイオ燃料は注目されており、政策としてバイオ燃料を推進している国もあります。このような場合に、それぞれの需要に対する取引は国の関与が強く影響するのか、あるいは市場メカニズムが機能するのかということに焦点を当てています。結果としては、バイオ燃料政策の基で油糧種子が高く買い取られるという点で国家による影響は大きいものの、取引構造としては利益面で輸出商社にメリットがあれば日本は今後も調達が可能という状況にあります。


 ただし、これらの取引において日本は買い負けていると言われています。日本はつい数年前まで長くデフレが続いていた影響で、高く原料を購入しても、製品の販売時に値上げする価格転嫁ができず、価格交渉で勝てなかった側面があります。そういった意味では、モノの価格上昇と合わせて給与も上がっていくような、適切なインフレが続き、ちゃんと価格転嫁ができる日本の経済状況が整えば、安定的に菜種や大豆も輸入できる状態を保つことができます。研究の具体的な方法については、基本的には理論的な枠組み―フードシステムの構造論的分析枠組みや、企業がどのように行動するかという理論が多くあるのですが、それらを踏まえながら、実際に総合商社や植物油脂メーカーに調査に行って、取引構造がどのように機能しているのかを整理する、質的な調査を行っています。この研究ではもちろんデータも見るのですが、数値に反映されない要素もたくさんあるので、質的な調査、つまり現場に入って、丁寧に聞き取っていくような調査が重要です。


 私のもう1つの研究分野が消費者行動です。行動経済学という学問があります。ミクロ経済学では人間が合理的に利益を追求して行動するという前提がありますが、実際に人間がとる行動は必ずしもそうじゃないよね、というところから出発しているのが行動経済学です。例えばお茶の値段1つをとっても、日常で購入する際は高いと思う値段設定でも、環境次第では妥当と思える値段があります。この点は、常に同じように同じ商品を評価するというミクロ経済学の前提とは異なる点です。そうした心理的な側面と消費者行動を捉えるという行動経済学という学問を使って、農産物分野のファーマーズマーケットの発展に生かす、人や社会・環境に配慮した消費行動(エシカル消費)の普及を促す、そうしたことを学生と共同で研究しています。現在は消費者主権と言われるように、消費者が望むものを積極的に生産する社会になっています。なので、1円でも安いこと、とは異なる軸で消費者が望む価値を理解することは、持続可能な食料消費の実現にとって重要です。


 例えば、食料安全保障の観点から言っても、国産食材を食べること、食料自給率を上げることは重要です。仮に何かしらの不測の事態が起きた時に、食料の輸出相手国、日本の輸入先が食料の輸出を止めてしまったら国民が飢えることなく暮らすのは非常に困難になります。それに、日本の農地が縮小し荒廃したとすると、それを復活させるのにはものすごく費用をかける必要があります。そうすると、自国で生産したものを食べること、自国で食料を生産している人が農地を維持し続けられることというのは非常に重要でもあると言えます。生産面ではこれまでにも食料自給率をあげる取り組みは継続して行われていますが、そういった機運を消費面から盛り上げていければもっと良いと思うので、そのために消費者が求めていることをより具体的につかんでいきたいと思っています」


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