大学での学びの内容を知る③(農学〈農業経済学〉系)Part 4
本記事は「大学での学びの内容を知る③(農学〈農業経済学〉系)Part3」の記事の続きです。そちらも合わせてご覧ください。
■研究室での学生の学び
「学生の研究対象は、基本的には学生がやりたいことに沿って設定しています。もちろんできる・できないはありますけれども、例えば今の学部4年生とこれから入る学部3年生について、なるべくやりたいことをやってもらう形をとっていますし、修士や博士の学生もそういう形になっています。先ほど紹介したように、私は流通と消費者行動の2つを研究対象としていますが、これらの分野は研究の手法が異なるので、学生はどちらかに絞って研究対象を選んでいます。どちらの分野についても実際の現場に交わって体験することが大切なので、近隣地域の農家やJA、民間企業などから協力を得たり連携したりといった形で研究を行うことが多く、人とのつながりはとても重要です。研究の性質上そういったコネクションを作る能力も大切なので、学生自身が飛び込みで協力を仰ぎながらネットワークを築き上げて研究に臨むことも多いです。研究内容を紹介すると、消費者行動について研究している学生の1人は、レストランで国産食材を使った料理、例えばハンバーグやとんかつ、鯖の塩焼きのような定食を売ろうという場合に、健康的な食材を一緒に提供すると国産食材がより高く評価されるのか、というテーマで研究を行っていました。調査の背景として『健康志向の強い人は国産志向も強い傾向がある』という既存研究があるので、その傾向が食事の選択時にも適用されるのではないかという仮説に基づいて研究を行っています。ただ結果的にわかったのは、効果があるかどうかは組み合わせによる、ということでした。つまり、健康志向が強い人は国産志向も強いという傾向があったとしても、それが食を選ぶ際の行動指針と結び付かないケースがあるのだということがわかった、というのが研究という場での1つの貢献です。もちろん理論を実証する結果が得られれば一番良いのは間違いないのですが、そうでなくても今まで言われていることと違ってこういうことが言えただとか、ここの条件が変わると理論は当てはまらないんじゃないかといった形で、条件による結果の違いを発見することも大切な成果になります」
■神戸大農学部を目指す皆さんへのメッセージ
「私自身、大学では勉強だけではなくサークルだったり、いろいろな人と接したりといったことを楽しんで自分の糧にしてきたので、大学に進むということ自体がいろいろな経験を積む場だと思っています。義務教育でもなければ社会に出るわけでもない中間の時間で、要は将来に向けて好きなことができる時間だと思います。そのため、これから先自分がどんなことをやりたいかを考えながら受験勉強してもらうのが一番良いと思います。どんなことをやりたいのかというのは、もちろん大学内でもそうですし、社会に出てからということも見越して、どんなことをやりたいか、どんな生き方がしたいかを考えながら勉強していくのが一番いいのかなと。特に、自分がどんな生き方がしたいかということは、勉強やそれ以外の経験をしていく中でも変わっていくものなので、大学に入学した後もずっと考え続けることになります。
私は、高校時代は理系を選択していて、大学に入った時点では砂漠に関する研究がしたかったんです。高校2年生ぐらいの時にテレビ番組で見た飢餓に合う人々の映像がきっかけで、食料の安定的な供給だとか飢餓の問題を知り、そういう人たちに寄り添う研究をしたいと志して農学部を選びました。それから砂漠の研究をしようと思っていた時に、選択していた授業の中に農業経済学や開発経済学を専門とする先生の講義があって、それが農業経済学について関心を持ったきっかけでした。こういった分野について学ぶ中で、農業経済学であれば人とのコミュニケーションを通じた研究ができると思ったんです。砂漠に行って研究をするとしたらもしかしたら人と会えないかもしれないですが、経済学なら人としゃべれるじゃないかと。自分が人と話すような研究、人間の行動に関する研究に進みたいと自覚したのはそういった経緯でした。自分の進む道を決めるきっかけというのは後から考えると偶然のような小さなものだったりもします。そういったきっかけを逃さないためにも、自分の将来については折に触れて考えてみると良いでしょう」









