大学での学びの内容を知る④ (国際関係学) Part 2

大学での学びの内容を知る④ (国際関係学) Part 2
大学での学びの内容を知る④ (国際関係学) Part 2

本記事は「大学での学びの内容を知る④ (国際関係学) Part 1」の記事の続きです。そちらも合わせてご覧ください。


■学生の学び

 「私が担当する中国の政治と外交、日中関係や日台関係の授業では、歴史的背景を簡潔に説明した後、現代的な課題をトピックごとに扱います。例えば、中国の政治と外交であれば、一帯一路戦略、中国とアフリカの関係、国連における中国の存在感などです。授業は講義とディスカッションを組み合わせ、学生の反応を見ながら進めています。


 ゼミでは学生が自身の関心に基づいてテーマを選び、論文を執筆します。私の著作を読んで歴史研究に興味を持つ学生もいますが、多くの学生は現代的な課題に関心を持っています。アメリカの台湾防衛意思、台湾人のアイデンティティ変化、若者の政治参加などが人気のテーマです。特に台湾の若者がなぜこれほど熱心に政治参加をするのかという問いは、日本の学生にとって新鮮な驚きとともに探求されています。


 中国に関しては、経済・文化やハイテク面に関心をもつ学生が増えてきました。SHEINなどの中国発アパレルブランドがなぜ成功したのか、TikTokのような動画プラットフォームがどのようにして若者文化を席巻したのか、中国のスマートシティ構想は実際にどこまで実現しているのかといったテーマが人気です。これらは学生たちにとって、自分たちの日常生活と直結する身近な問題として捉えられています。


 ゼミでは、情報リテラシーの重要性について、特に丁寧に指導しています。現在の学生はテレビや新聞よりも、YouTubeやTikTokなどの動画サイトから情報を得ることが多く、短く切り取られた情報に接する機会が増えています。インターネット上には極端な意見や事実関係の不確かな情報も多く、ゼミではこれらの情報をどのように見極めるかについて頻繁にディスカッションを行います。学生が調べてきた内容について、その情報源は何か、どのような根拠に基づいているのかを問い、誰かが言っていたことをそのまま信じるのではなく、さまざまな情報を比較検討して、自分の考えを持てるような批判的思考力を養うよう心がけています。大学でゼミに参加する最大の利点は、表面的な情報で終わらず、より深い理解に到達できることだと考えているので、そこは意識的に解説するようにしています。


 ゼミでは毎年、台湾やアジア諸国へのスタディツアーを実施しています。学生へは現地での体験を強く推奨しているので、そのきっかけとしてゼミのみんなで海外に渡航し、学生たちが直接その地の人々と交流・対話できる機会を用意しています」


■高校生へのメッセージ

 「高校までの教育では、現代の国際関係や周辺国の個別事情について学ぶ機会は限られています。しかし、日本人の生活は近隣諸国との関係と密接に結びついています。まずは日本の周辺にどのような国があり、そこでどのような新しい文化が生まれているのか、どんな問題を抱えているのかということに関心を持って、日本から一歩踏み出していろんなものを見てほしいと思います。


 私自身が研究者になったきっかけは、中学生の時に初めて訪れた中国での経験でした。1990年代半ばの中国は、まさに高度成長期の真っ只中にあり、その発展のスピードとパワーに圧倒されました。初めての海外経験でもあり、現地で友人もでき、中国という国に強い愛着を抱いたのを覚えています。しかし、高校時代に台湾海峡ミサイル危機が発生し、大きな衝撃を受けました。好きになった中国が軍事的な危機を発生させたということがやはり怖かったですし、この体験が、単純な好き嫌いを超えて、なぜそのような事態が起こるのかを学術的に理解したいという動機につながりました。大学時代には日本国際問題研究所でのインターンシップを経験しました。そこで、政治的に困難な関係にあるアジア諸国間で、研究者たち同士の地道な交流が政策や国際交流を支えていることを知り、そういった活動を自分もしていきたいと思い研究者の道を選びました。そういった経緯もあり、現在も研究活動と並行して、国際交流の促進にも努めています。学生同士の交流、海外への学生引率、来日する海外の研究者や実務家と日本社会の対話の場の創出などには特に力を入れています。


 こういった活動を続けていて思うことは、友人を作ることはとても大切だということです。私自身、若い頃に中国でも台湾でも良い友人関係を築けたことが、現在の研究活動を支えています。中国と台湾との間で政治的な緊張関係があっても、人と人との交流は続いています。中国と台湾の関係は、日本から見ると緊張一色に見えがちですが、実際はもっと複雑で多層的です。彼らは同じ言葉を使っていますし、文化的にもさまざまなものを共有しています。現在も多くの台湾人が中国で働いていますし、かつて交流が盛んだった時期に中国から台湾に移住し、現地で結婚したような人もたくさんいます。人と人の交流というのは、政治から影響を受けるとはいえ、政治とは別の次元で一貫して続いているものです。皆さんにも日本に限らずいろいろな国で良い友人をたくさん作っていってほしいです」


★おすすめコンテンツ紹介       

『街道をゆく25 中国・閩のみち』(新装版)馬遼太郎著(朝日新聞出版2009年) 『街道をゆく40 台湾紀行』(新装版)司馬遼太郎著(朝日新聞出版2009年)


~コメント~

「中国・台湾を訪れることがあれば持っていくか、事前に読むことをおすすめします。これらの地域が日本と歴史的に深くつながってきたことがよく理解できる良書です。特に台湾紀行には李登輝氏との対談も収録されており、その点でも貴重です」 

    
全国 学校のお天気 大学案内 大学入試偏差値ランキング 過去問データベース 入試日程カレンダー 大学入試科目検索システム
    東進ドットコム >  TOSHIN TIMES > 大学での学びの内容を知る④ (国際関係学) Part 2
LINE twitter Instagram Facebook