サイエンスセミナー 光を操る技術で、医療を革新する 室温で核スピンを制御医療をアップデート

サイエンスセミナー 光を操る技術で、医療を革新する 室温で核スピンを制御医療をアップデート
サイエンスセミナー 光を操る技術で、医療を革新する 室温で核スピンを制御医療をアップデート

この記事は「サイエンスセミナー 光を操る技術で、医療を革新する MRIの革新で医療診断に、劇的な変化の可能性」の続きです。よろしければそちらもあわせてご覧ください。


 MRIは、私たちの体を構成する水素原子の「核スピン」という性質を利用しています。人体の約60%を占める水、その水素原子の原子核にも核スピンと呼ばれる小さな磁石のような性質があります。MRIは強力な磁場をかけて核スピンの向きを揃え、そこに電波を当てることで信号を得て、体の内部の画像を作っているのです。


 しかしここに大きな課題がありました。核スピンから得られる信号は非常に弱いため、水のように体内に大量にある物質の信号しか検出できず、脂質やタンパク質など微量な物質を見ることはできないのです。もしも現在のMRIでは検出できない、体の中のより詳細な情報が見えるようになったら、医療はどう変わるでしょうか?

 例えば、がん細胞はピルビン酸から乳酸という物質を通常細胞より速く作ります。この乳酸を直接MRIで検出できれば、がんの早期発見や、がんの活動状況の把握が可能になります。

 

 また、抗がん剤を用いた治療では、腫瘍のサイズの変化を数週間から数カ月かけて観察する必要がありました。しかし代謝物質の変化を薬の投与直後からリアルタイムで観察できれば、薬の効果をすぐ判断でき、薬を即座に変更できるようになります。さらにタンパク質の構造変化、アミノ酸濃度、DNAの状態なども観察できるようになれば、病気の診断はより正確になり、個人に合わせた医療が可能になるでしょう。


室温で核スピンを制御医療をアップデート

 

 そうした未来の医療を実現するために、私たちは「スピン化学」によってMRIに革新をもたらそうと考えています。電子スピンは、核スピンよりはるかに強い信号を出しますが、非常に不安定ですぐ消えてしまい、核スピンは弱いが安定しています。MRIは安定な核スピンを使うため、安全で長時間の測定ができるのですが、その代償として感度が低いのです。

 

 そこで私たちは次のアイディアを考えました。まず光を使って「励起三重項状態」を作り出し、分子に非常に強い磁気を持たせます。次にこの強く整列した電子スピンを、特殊な化学的手法を用いて核スピンに「転写」します。すると通常はバラバラな方向を向いている核スピンが、電子スピンと同じように整列します。この状態を「超核偏極状態」と呼びます。

 

 超核偏極状態になった核スピンは、通常の状態と比べて1万倍から10倍も強い信号を出すことができます。例えるなら静かな声が、突然ロックコンサートの大音量になるようなものです。

 

 この方式は、室温で光を当てるだけで短時間・容易に超核偏極状態を作ることができ、圧倒的にコストを下げられます。近い将来、病院のMRIの横に私たちの装置があって、医師がボタンを押すだけですぐ造影剤が作られ、病気の超詳細な診断ができる|そんな未来を実現するのが私たちの目標です。


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