サイエンスセミナー 世界の不思議を突き詰める、量子力学 part2
この記事は「サイエンスセミナー 世界の不思議を突き詰める、量子力学 part1」の続きです。よろしければそちらもあわせてご覧ください。

ユニークな誘いの言葉から新しい物理の世界へ
イリノイ大学で博士号を取得した後、博士研究員いわゆるポスドクとしてイタリアのトレント大学に行きました。ここには超低温に冷やした原子が起こす現象(=ボーズ・アインシュタイン凝縮)を研究する専門の研究所があります。そこでアメリカに続いて、超低温での原子の動きを研究していたのです。
ところがある日、ランチを食べるために食堂で並んでいると、隣のオフィスの研究者ヤコポ・カルソット博士から、いきなり声をかけられました。
「トモキ、トポロジカル絶縁体を知ってるか?」と言われ「知らない」と答えると、「興味はないか」と突っ込んできます。トポロジカル絶縁体について名前は聞いていたし、その分野が盛り上がっているのも知っていました。だから「興味はあるよ」と答えたのがきっかけとなり、共同研究がスタートしたのです。カルソット博士は、振り子でトポロジカル絶縁体をつくれると話しました。これが何が何だかさっぱりわからないながら、何かすごいことを言っている気がしたのです。
ちょうどその頃、私の研究テーマである超低温のボーズ・アインシュタイン凝縮を活用して、トポロジカルな絶縁体をつくるといったアイデアが広まり始めていました。トポロジカル絶縁体とは絶縁体、つまり電気を通さない物質ですから、本来なら電流は流れません。ところがトポロジカル絶縁体では、なぜか表面だけに電流が流れるのです。トポロジーとは、変形をしても変わらない性質を研究する数学の分野を意味します。例えばコーヒーカップとドーナツは、どちらも穴が一つずつあるためトポロジー的には同じものとみなされます。量子力学では物質の性質は波動関数という関数で表されるのですが、トポロジカル絶縁体はこの関数の形(すなわちトポロジー)が普通の絶縁体とは違っているのです。イタリアにいた五年の間にトポロジー関連で論文をいくつか書き、この分野でも名前を知られるようになりました。












